伊藤若冲を発掘した「アメリカ人コレクター」日本人は目もくれず…倉庫でほこりかぶってた作品

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   江戸時代の絵師・伊藤若冲(いとう・じゃくちゅう)の絵画展が7月末(2013年)から福島で開かれている。仙台、盛岡に続く巡回展で、東北の被災地をはげまそうというアメリカのコレクター、ジョー・プライス氏と妻の悦子さんの熱意の賜物だ。

   展覧会場は老若男女でにぎわう。とりわけ大勢の子どもが目につく。「勇気づけられた」「感動で震えた」という声が聞こえる。その会場で、国谷裕子キャスターがプライス夫妻に若冲の魅力と東北への思いを聞いた。

被災地励ましたいと仙台、盛岡、福島を巡回「これが最後の里帰り展」

   若冲は細密描写と鮮やかな色彩、命の息ぶきを感じさせる独創的な構図、題材で、「神の手を持つ」とまでいわれた絵師だが、明治以後はなぜか忘れられた存在だった。これに光を当てたのがプライス氏で、23歳の時にニューヨークの古美術商で「葡萄の絵」に出合ったのが最初だ。以来60年、600点という世界有数の江戸絵画のコレクターとなり、とりわけ若冲を現代に甦らせた功績は大きい。2006年に東京国立博物館で開かれた若冲展は、1日の観客動員数世界一を記録した。しかし、今年83歳。「おそらくこれが最後の里帰り展」という。

   夫妻は東日本大震災の報を知った時、「作品を持っていかないと後悔する」と思ったという。「東北の人たちは自然の最も恐ろしい姿に直面した。 しかし、自然のもついやしの力を思い出して欲しいと感じた」と話す。

   ロサンゼルス郊外の自宅には絵の鑑賞室がある。ここでは江戸時代と同じように、障子を通した自然の光だけで見る。人工光だと絵が平板に見える。自然 光だとたしかに奥行きが深くなる。

   機械工学を学び美術とは縁がなかった。それが「葡萄図」との出合いで人生が変わった。長年にわたるコレクションの中で、プライス氏が最高とするのが「鳥獣花木図屏風」だ。日本美術史上に例を見ない独創的な手法で描かれている。想像上の動物まで交えた鳥獣や草木は、極彩色の8万6000 個ものマス目で描かれており、マス目の中にもマス目がある。若冲の作品の多くは美術界から注目されず埋もれてきた。この屏風も博物館の倉庫でホコリをかぶっていたという。

「千載具眼の徒をまつ」(理解者は長い時を経て現れる)

   若冲は「千載具眼の徒をまつ」(理解者は長い時を経て現れる)という言葉を残していた。

   国谷が「それがあなただったというわけですね」

   プライス「一番の理解者になれたとしたら、それは美術の教育も受けず、専門家の言葉に影響されなかったからかもしれません」

   国谷「もし『葡萄図』と出合わなかったら、どうしてましたか」

   プライス「パイプラインの仕事をしていたかも。豊かな生活を与えてくれたと感謝しています」

   国谷「長く理解されず、孤独ではなかったですか」

   プライス「ずっと孤独でしたよ」

   悦子夫人は「日本人の学者以外だれも来てくれなかったですね」と話す。プライス氏も「専門家は絵そのものでなく、だれが描いたかの署名にしか関心がなかったです。写真を撮って、次を見せてと…」「人生の半分以上が、なぜみんな見てくれないのかと悩む日々でした。それがいま、これだけたくさんの人が涙を浮かべながら見てくれている。本当に報われた思いです」と語る。

   プライス氏が財団を設立したのも、「絵師たちの美の世界を、もっと楽しんでもらいたかったからです。被災地の人たちにもね。絵が語りかけるものに耳を傾けてください。多くのメッセージが聞こえてきますよ」と言う。

   う~ん、それには福島まで出かけていかないといけない。展覧会は福島県立美術館で9月23日までだ。こいつぁ悩むなぁ。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2013年8月1日放送「生命(いのち)の色を被災地へ~若冲・奇跡の江戸絵画~」)

文   ヤンヤン
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