人気高血圧薬データ改ざんの闇!製薬会社と担当教授の癒着…1億円の寄付・消えた社員

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   大手製薬会社のノバルティスファーマ社の高血圧薬「ディオバン」は、血圧を下げるだけでなく脳卒中や狭心症の予防に大きな効果があるとされ、これまでに1兆2000億円を売り上げてきた。しかし、ノバルティスファーマ社の社員が臨床試験に参加し、研究データを操作した疑いが強まって雲隠れしてしまった。

   厳正であるべき薬効の臨床研究に販売元の社員を参加させていた大学教授は、この製薬会社から多額の寄付金を受け取り、それが「仕事だ」と豪語して宣伝用DVDにも出演していた。

他社薬と効果に違いなかった「ディオバン」これまでの売り上げ1兆2000億円

   ディオバンの臨床研究に操作が加えられていたことが明らかになったのは京都府立医大と東京慈恵会医大だが、なぜこうしたことが可能だったのか。ディオバンは血圧を下げる効果が承認されて発売が認められたあと、多くの患者に薬を投与する臨床研究が行なわれ、血圧を下げる効果のほかに、脳卒中や狭心症を予防する効果も高いという論文が出された。治験は法律に基づいた厳しい規制があるが、、臨床研究は医師の裁量に任されていて法的規制はない。まさにここに落とし穴があった。

   京都府立医大の論文とはどんな内容だったのか。高血圧の患者約3000人が参加してディオバンの臨床研究が始まったのは2004年だった。ディオバンを投与する患者1517人と他の高血圧薬を投与する患者1514人に分けて、毎日服用してもらって4年間の経過を観察した。その結果、論文によると、他の高血圧薬を服用した患者グループのうち、のべ155人が脳卒中を発症し、ディオバンを服用した患者グループはその半分83人で済んだとなっている。

   ところが、京都大付属病院野の由井芳樹医師がこの論文に疑問を抱いた。海外に、脳卒中などの予防効果が他の薬より高いと認めた研究がなかったからだ。京都府立医大は調査委員会を立ち上げ、伏木信次調査委代表(副学長)が「結論としては誤りがあった可能性が高いと考えられる」と述べ、論文のデータが操作されていたことを認めた。

   約3000人の患者のうち、京都府立医大に残っていた223人のカルテと論文データを比較したところ、他の薬の投与を受けた患者111人のうち論文では脳卒中患者が34人いたことになっているが、カルテには20人しかおらず、14人増やす操作が行なわれていた。ディオバンを投与された112人の患者については、論文では脳卒中発症が14人となっていたが、カルテでは2人多い16人だった。つまり、ディオバンも他の薬も効果に大きな差がなかったのだ。

   誰が論文データを操作したのか。調査委が注目したのは、データ解析を担当していたノバルディスファーマの元社員である。元社員は京都府立医大と同様にディオバンの高い効果を認めていた慈恵医大の臨床研究にも参加していた。元社員の自宅は留守で行方をくらましたままだ。

宣伝DVDにも出演していた京都府立医大・松原弘明下元教授

   京都府立医大の研究チームの責任者の松原弘明下元教授は、ノバルディスファーマのディオバン宣伝用DVDに出演し、「心臓、腎臓、脳の合併症のある方に対してはファーストチョイスで使うべき薬だ」と推奨していた。元教授の研究室には、ノバルディスファーマ社から2009年以降4年間に1億円を超える寄付金があったことも分かった。大学の研究室が企業から受ける寄付金としては抜きんでた額という。

   取材にあたった科学文化部の稲垣雅也記者は「ノバルディスファーマは『会社ぐるみの関与はなかった』と否定しています。元社員の臨床研究への関与は直接の上司だけしか知らず、その上司は元社員が大学の非常勤講師だったので、その立場で関わっていたと思っていたと話しています」

   臨床研究の問題に詳しい東京大学の渋谷健司教授は、臨床研究の体制の遅れについてこう述べた。「今までモラルの頼りすぎたきらいがありますね。法的拘束力あるルールづくりとか、実際に臨床研究する病院では人やお金が少ない現状とか、問題が起こったときに調査権限を持つ機関がないなど、3つの問題が浮き彫りになりました」

   製薬会社との癒着が起きやすい臨床研究を教授の裁量に任せておいていいのか。遅ればせながら癒着しやすい構造が問われる結果になった。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2013年7月31日放送「疑惑の薬~論文データ操作の闇~」)

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