『はだしのゲン』読ませるな!島根・松江市教委が小中学校に要請…シーン残酷

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   広島で被爆した体験をもとに描いた中沢啓治(2012年12月他界、73歳)の漫画『はだしのゲン』(汐文社版、全10巻)が島根県松江市内の小中学校の図書館で自由な閲覧が禁止され、閉架状態になっているという。なぜ戦争をしたのか、なぜ2発も原爆を投下される前に戦争を終わらせることができなかったのか。まともな反省もないまま原爆や戦争の悲惨さにフタをしてしまう動きをリポーターの黒宮千香子が取材した。

学校図書館では自由閲覧禁止の閉架措置

   発端は昨年12月(2012年)のことだ。松江市内の小中学校校長が集まる校長会で、市教育委員会から子どもたちの自由な閲覧をやめるように『お願い』があった。市教委はその理由を「暴力や殺害シーンが過激で、トラウマになったり面白おかしく捉える子どもがいるのではということで制約をかけた」という。

   市内の49小中学校のうち、39校が『はだしのゲン』全10巻を保有していたが、校長側はこれを要請と受け取り、自由な閲覧を禁止する閉架措置をとった。

   『はだしのゲン』は1973年に少年雑誌で連載が始まり、映画化もされた。単行本は650万部を超すベストセラーになり、アメリカ、ロシアなど核保有国も含め世界20か国で翻訳、出版されている。

   それなのになぜ被爆国の日本で、子どもたちが自由に閲覧することを禁止するのか。古川康徳副教育長は「子どもたちにとって残酷なシーンとか過激な描写を見せるのはいかがだろうかという意見がありました。貸し出しについては先生が判断し、『どうしても』という子どもにだけ。基本的には先生たちと一緒に読む本として考えてもらえませんかということで・・・」と語る。

   しかし、これは問題が大きくなったための言い訳と取れる。市教委が残酷、過激とレッテルを貼った本をあえて先生が取り上げるとは思えない。松江市の小学4年の子どもを持つ父親は、「自由に見られないのは残念。一番問題なのは、市民の声をよく検討したのか分からない状態で閉架措置をとったことだ」と批判している。

子どもたちにとって原爆や戦争の悲惨さを自分で考える資料

   たしかに戦場での残酷な描写があるが、ウソを書いているわけではない。元日本兵の証言で事実あったとされている話を書いているし、原爆投下の瞬間は著者が6歳の時に自ら体験した印象を書いている。教育評論家の石川幸夫氏は「子どもたちからすると身近な原爆や戦争の悲惨さを自分で考える資料です。ある意味で民間の貴重な資料と思いますね。今回の市教委の判断は勇み足ではないか。教育者の立場からすると疑問が残ります」と言う。

舘野晴彦(月刊『ゲーテ』編集長)「はっきりいって、市教委の判断は愚の骨頂。著者は戦争の悲惨さを伝えようと身を削る思いでつくった。ちょっと過激だからというだけの発想でふたをしてしまう。そういう発想で、普段から仕事をしているのではないかと疑ってしまいますね。ひどい話だ」

   市教委は22日に改めて話し合うというが、これで教育の現場を指導する役割が果たせるのかはなはだ疑問だ。

文   モンブラン
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