土に帰ってなお孤独な流離…藤田嗣治の無念描いて見事!さすが重延浩ドキュメンタリー
<藤田嗣治・秋田への夢旅 地を泳ぎ天を歩く>(BS朝日)

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   さすがは重延浩(脚本・演出)作の美術ものだ。導入部はパリの連合国倶楽部にある藤田嗣治の壁画、「花鳥図 陸鳥」と「花鳥図 水鳥」の金箔の具象画を舐めるように映す。まるで日本画のように細密に描かれた鳥や動物。終りは秋田で描いた壁画、秋田伝統の祭りや織物の四季折々図「秋田の行事」。間に日本とフランスを行き来し、愛した女も複数のフランス人や日本人だった彼の生涯を語る。
   藤田と言えば筆者は以前、新聞社学芸部の美術関係者から、藤田の未亡人が強欲で協力してくれないので、高名な割には日本で大々的な嗣治の個展が開けないのだと聞いた記憶がある。だが、このドキュメントを見ると、夫人から膨大な藤田のプロ裸足のライカで撮影した写真が寄贈されたとあり、頭の上に?マークがついた。
   多分、彼が意図して戦争協力画家ではなかったにもかかわらず、反戦論者でなかったからと一時期日本でやり玉にあげられたことに嫌気がさして、国内ではやりたくないと思ったのだろうか。フランスの研究者は、藤田の置かれた立場に理解が深く、彼の価値には何の影響もないと言っている。カソリックに帰依し、夫人と共に異郷に眠るレオナール藤田の、土に帰ってもなお芸術家の孤独な流離が聞こえてくるようなドキュメンタリーに、筆者はうるうるした。
   わずか29歳で死んだマドレーヌが歌う「小雨降る街」の、仏語訛りの下手な日本語も哀愁があり、しみじみ聞き惚れたのである。(放送2013年9月22日21時~)

(黄蘭)

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