街を小さくしよう!人口減少でコンパクト化進める自治体…中心部に住民集めインフラ縮小

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   およそ9年前から、それまで住民や子供たちに使われていた公民館やプールなどの公共施設の取り壊しが各地で続いている。ある自治体の職員は「これまでの公共施設をそのまま維持・継続すれば、やがては財政破綻に陥ります。それを回避するためには公共施設の整理統合が必要です」と語った。コンパクトシティへの転換だ。

   郊外へ郊外へと拡張してきた都市に歯止めをかけて、街の中心部に住民を移動させることで、公共施設の維持・管理費を削減しようとしている。キャスターの国谷裕子はこう解説する。

「急速な高齢化が進む都市では、人口減少で空き家の増加、収入減少により公共施設やインフラの維持コストなどの負担増といった問題に直面しています。そこで、拡大しすぎた都市の機能を住民の身の丈に合わせて、中心部に集約しようというわけですが、こうした行政のあり方に違和感を感じている住民も少なくありません」

公共施設の統廃合で財政負担軽減

   2050年の人口分布予測図を見せながら国谷が言う。「政令指定都市の20%、人口1万人から5万人の都市の40%で人口減少が起きます。大都市のごく一部にしか人口が密集しません。このため、全国の自治体の約4割が集約化を検討しています。しかし、コンパクトシティへの転換は、住民の納得を得るのが難しい状況にも直面しています」と国谷は伝えた。

   林良嗣・名古屋大学大学院教授は名古屋市内と郊外のインフラ維持などにどのぐらいの格差が生じているのか、500メートル四方ごとに試算した。市の中心部では1万6000円前後だが、名古屋市郊外では80万円近くもかかる場所があった。林教授は「現状を放置すれば、将来は180倍近い格差が生じる地域もあります」と懸念した。

   青森市は観光客誘致のための大型商業施設建設や地元商店街などの整備を行った。しかし、客は予想したほどには集まらず、閉店が相次ぎ、商店街はシャッター通りとなった。そこで青森市が打ち出したのがコンパクトシティだ。対象に一つとなった市郊外の幸畑地区は高齢化率は30%である。青森市の構想では、この地区に住む高齢者に所有する不動産を売却してもらい、その資金で市の中心部に移転するというものだった。しかし、思わぬ落とし穴があった。郊外の不動産に買い手が付かないのだ。地区の役員は「市から事前にひと言の相談もなかった。自分たちの希望を市へ伝えても返事はなし。たとえ、所有の不動産が売却できても、中心部の中古マンション購入には最低でも2000万円は必要となります。それだけの元手は手に入らない」と話す。

行政が旗振るだけでは動かない住民

   国谷はゲストの姥浦道生(東北大学准教授)に「なぜ、住民は自治体が提唱するコンパクトシティに違和感を覚えるのでしょう」と聞く。姥浦准教授は「コンパクトシティは人口減少という現実を目の前にすれば、論理的には合理性があります。でも、人が移り住むというのは簡単ではありません。それまでの近所付き合いなど人との付き合いもあり、経済的にも重い負担がかかります。行政が提唱したことだからと、簡単には移りにくいのが現状でしょう」

   国谷は「身の丈にあった街、コンパクトシティを実現するためには、どこから手を付ければいいのでしょうか」

   姥浦准教授「行政決定だからというのではなく、将来も自分たちが住む街の空間をどうしたいのか。土地の使い方はどうあるべきかなど、行政と住民が一緒になって考える必要があるでしょう。一つに集約するのではなく、街は街、郊外は郊外と多様なライフスタイルが交流できる街作りが大切です」という。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2013年10月21日放送「わが町を身の丈に~人口減少時代の都市再編~」)

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