2024年 4月 24日 (水)

水銀規制「水俣条約」あの悲劇防げるか?生産・使用制限緩く、住民の健康管理も奨励レベル

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   「ミナマタ」は世界語になっている。恐るべき水銀の毒性を知らしめた忌まわしい名前だ。その名前を冠した「水銀に関する水俣条約」が先月(2013年10月)、熊本で採択された。2度と悲劇を起こすまいとの願いから、日本が主導した脱水銀の国際条約である。だが、その実効性となると、見通しは決して明るくない。

世界最大の排出国・中国から風に乗って日本汚染

   ブラジル北部のアマゾン川流域には小規模な金の採掘業者がいる。水銀を塗った板の上に土砂を流すと金と水銀の化合物ができる。これをバーナーで熱すると水銀が気化して金だけを取り出せる。しかし、気化水銀は大気を汚染し、余った水銀は川へ流され、微生物→有機水銀に変化→魚に濃縮→魚を食べた人間に蓄積という水俣病の仕組みが進行中だ。

   流域住民に魚は欠かせない食材なのは水俣の漁民と同じである。ブラジル保健省が2012年に行った調査で、血液中の水銀濃度が最高で232ppbと出た。WHOが「水俣病症状が出る恐れ」とする基準200ppbを上回る。3人に1人が医師の診察が必要とする濃度だった。水俣病は有機水銀の蓄積で神経を侵される病気だ。住民はいま「子どもや孫の体が心配」と怯える。

   水銀は揮発性が強く大気や水に広がりやすい。一方、電気をよく通し合金も作りやすく、電池、蛍光灯、体温計・血圧計など幅広く使われてきた。 日本では1960年代のピーク時は年間2000トン超が使われていたが、リサイクルが進み、水銀を使わない技術も開発されていまは10トン程度と激減した。

   しかし、水銀汚染はいまや世界規模で飛んでくる。志賀県立大の永淵修教授が6年前から乗鞍岳で行っている大気中の汚染物質の観測で、去年10月上旬(2012年)、水銀濃度がひと晩で5倍になった。北西からの強い風に乗ってきた中国の汚染だった。中国は世界最大の水銀排出国である。主な排出源は火力発電所から一般家庭の暖房にいたる石炭だ。石炭には微量の水銀が含まれ、燃やすと排出される。それが気流に乗って地球全体を回る。PM2.5だけではなかったわけだ。

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