<ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル>
あの美しさをすべて取り込みたい…老彫刻家を人生最後の作品に駆り立てたモデルとの「幸せの共有」

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(C)2012 Fernando Trueba PC. , All rights reserved.
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   『ベルエポック』『泥棒と踊り子』のスペイン人監督・フェルナンド・トルエバが、フランスの彫刻家アリスティド・マイヨールに触発されてメガホンを取った。舞台は1943年のフランスだ。スペインとの国境近くの村で暮らす老彫刻家クロス(ジャン・ロシュフォール)は生きる希望を失っていたが、ある日、妻(クラウディア・カルディナーレ)が連れてきた美しいスペイン人の娘メルセ(アイーダ・フォンチ)と出会い、生きる希望=創作意欲を取り戻す。モノクロームの画面の中で、山のアトリエで創作に没頭する老人と若いモデルの交流が描かれていく。

生きる喜び、哀しさ、苦しさ浮き彫りにするモノクローム画面の説得力

   メルセの若く美しい裸体、メルセに向かう老彫刻家の瞳の色は、見る側に委ねられている。人間の肉体の線を鮮明に映すモノクロームの画面がひたすら美しく、メルセとクロスが互いに影響し合っていく「濃密な時間」が続く。クロスは存在そのもが芸術のようなメルセを、時間の中に永遠に閉じ込めようとする。それは彼女を自分の作品として完成させることだ。だが、残された時間が少ないことも自覚している。その矛盾に苛まされた老人の瞳には、色彩豊かな「夏」が宿っていた。

   第二次世界大戦末期、メルセはフランコ政権下のスペイン・カタルーニャ地方からドイツ占領下の南フランスに逃れてきた。メルセの肉体が美しいのは、命の保証もない不安定な時代下でも、生きていることを謳歌しているからなのだろう。山のアトリエの外では戦争が行われ、老彫刻家は最期の時「夏の終わり」を予感する。

   老いた芸術家が己の死を悟ったことで到達できた世界で作られた彫刻は、彼の最高傑作に違いない。クロスは芸術家として幸せだったのだとトルエバ監督は画面に語りかけていく。そしてトルエバ監督としても最高傑作になった。

川端龍介

おススメ度☆☆☆☆

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