出国も地獄、残るも地獄…シリア難民「国外210万人、国内650万人」仕事なく、食べ物なく、支援も届かない

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   シリア内戦が始まって2年8か月が過ぎ、まもなく1000日目を迎える。この間に12万人が犠牲となり、周辺国へ逃れた人はシリア国民の10人に一人、210万を超えた。レバノン75万人、ヨルダン55万人、トルコ52万人、イラク20万人、エジプト12万人となっている。さらに、国内でさまよっている人は650万人に達しているという。これらの国内難民は、政府軍や反政府軍によって包囲される中で、外国からの支援物資の提供を受けることもままならない状態という。

   化学兵器を廃棄する約束でアメリカの軍事攻撃を逃れたアサド政権は、世界からお墨付きでももらったかのように、反政府軍への攻撃を強め、反政府側の拠点を次々に奪還しているという。安全を求め周辺国に逃れても十分な支援は得られず、過酷な暮らしが続く。残るも地獄、出るも地獄という終わりの見えない不安のなかで難民は「世界中が私たちを見捨てた」と悲痛な叫び声を上げている。

ヨルダン・ザアタリキャンプ「雨が降ったら濡れながら寝るしかありません」

   シリア国境から約15キロ離れたヨルダンの砂漠地帯に昨年7月(2013年)つくられた、ザアタリキャンプの難民は現在10万人を超え、いまも1日平均300人が新たにたどり着く。その多くが収入のない難民で、国際機関からの食糧配給に頼って生活している。

   自宅近くで銃撃戦が起こるようになって、1年前に妻と3人の子どもを連れて逃れてきた44歳の電気技師は、仕事がなく、持ってきた現金も底をついた。脳の難病を患っている5歳の長女をキャンプの外にある病院に連れて行きたいが、交通費すら工面できずにいる。藁をもつかむ気持ちで国連の事務所を連日のように訪れ、長女の治療について相談するが、支援を受けられず苛立つ毎日を送っている。

   その日、夕方から雨が降ってきた。「この状況は最悪です。濡れながら寝るしかありません」

   今月に入って雨が多くなった。まもなく寒さの厳しい季節を迎えるという。

   もっと辛いのは戦火で夫や父親を亡くした女性や子どもたちで、全体の7割を占める。父親を昨年12月に内戦で亡くした13歳の少年は、がんに侵された母親と幼い兄弟7人の世話をしている。少しでも家計の足しにしようとキャンプ内を回って仕事を探すが、13歳でできる仕事はなかなか見つからない。

   そうした過酷な生活に限界を感じシリアに帰ろうと考える難民が増えている。くだんの電気技師もその一人だが、「子どもを連れてどこへ行けばいいのか。絶望しかありません」と決断できずにいる。

各国とも受け入れ限界―「これまでに経験したことない厳しい状況」(国連担当者)

   長年、世界各地の人道支援に携わってきたUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)駐日事務所の久保眞治副所長はこう話す。「内戦が始まってまもなく1000日になりますが、危機はまだ終わっていません。毎日新たな難民が周辺国に逃げてきています。先週の数字では1800人余りがザアタリキャンプに到着し、うち444人が4歳以下の子どもでした。

   数もさることながら、地域や国際社会に与えた影響の複雑さを考えると、これまで経験したことのないような事態が進行しているといっていいでしょう」

   国谷裕子キャスター「気になるのは、シリア国内に650万人もの国内難民がいるといわれていることです。そうした難民に支援の手は届いているのでしょうか」

   久保副所長「紛争が続いているので支援には危険が伴います。難しい状況の中で、国連の人道問題の団体を中心に物資を届けることを進め、今年は650万人のうち280万人に何らかの形で物資を届けました」

   より安定した生活を求めてヨーロッパに向うシリア難民が増えている。ヨーロッパは人道支援として、アフガニスタンやイラクから積極的に難民を受け入れてきたが、そこへさらに6万人を越えるシリアからの難民が押し寄せている。しかし、難民受け入れが財政を圧迫しつつあることから、受け入れに対し異論が出始め、どの国がどれだけ受け入れるか大きな議論になっているという。

   久保副所長は「シリアはイラク難民を10年にわたって受け入れてきた人道大国だったことを忘れないで欲しい」という。その「人道大国」から未曾有の難民が出国し、その難民もあらゆる面で限界に来ている。停戦が求められるのだが、複雑な利害関係のなかでまったく出口は見えていない。

NHKクローズアップ現代(2013年11月27日放送「漂流するシリア難民」)

文   モンブラン
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