2024年 4月 23日 (火)

増え続けるストーカー被害!歪んだ恋愛観加速させるスマホ―行動監視し「女性所有物化」

   ストーカー行為は年間2万件と急増している。警察が加害者に警告すると8割から9割は止むそうだが、止まらないものがある。先月(2013年11月、)千葉県市川市で22歳の女性を殺害したのは、9月まで一緒に暮らしていた男だった。理由は「復縁できなかったから」。それだけで人を殺す。

   凶悪事案に共通しているのは、強い執着心と女性は自分の所有物だという勘違いの支配欲だ。これが殺意に変わる。なぜか。ようやく加害者の心理に目が向けられ始めた。

拘束ツール「GPSで居場所確認」「朝から寝るまでメール」「10分以内の返信」…

   元ストーカーの30代の男性が語る。職場の同僚とデートする間柄だったが、1年ほどで避けられるようになった。「かえって執着した。自分をわかってほしい、わからせてやると、憎しみ、怒り、殺意が芽生える」

   女性の行動を監視した。「許可してない行動をとるな。思い通りに動く人形だと思っていた」。他の同僚と仲良くしているとパニックになり、深夜に呼び鈴をならし続けた。3年で女性が神経を病み、そこで気づいた。三鷹市で女子高生が殺害された事件の加害者を見て、「もしかしたら自分もああなったかもしれない。(殺すことで)自分の手の中に入ったような気持ちになっている」 という。

   10年以上ストーカーやDVの加害者と向き合ってきた千代田区のNPOで活動している吉祥真佐緒さんは、いくつかの要因をあげた。まず幼少時の家庭環境。「父親が母親に暴力を振るうのが多かった」「意に反する行為に罰を与える。罰する権利があるという勘違い」

   若者にストーカー・リスクが高まっている。首都圏の約50の大学で行ったアンケートで、「好きな相手を支配したい」(男)、「強い束縛 は愛されてる証拠」(女)など、支配や束縛が愛情だという歪んだ恋愛観が見えた。この傾向を加速させているのがスマホの普及だ。GPSで場所がわかる。メールは朝から寝るまで。一緒にいる人の写真を送らせる。メールを10分以内に返さないと電話だ。完全な束縛ツールになってしまう。「予備軍はたくさんいます。今後も事件が起こる可能性は高いですね」(吉祥真佐緒さん)

   警察庁は加害者検挙、被害者保護の徹底を打ち出したが、「被害者を守るには、罰を与えるより加害者心理へのアプローチ、治療しかない」と語るのは、昨年11月の逗子市ストーカー殺人の被害者の兄だ。加害者は脅迫容疑で1度逮捕されながら、大量のメールを送り続け、探偵を雇って住所を突き止めて凶行に及んだ。兄は警察庁のストーカー対策会議で「警告や処罰では止められない。事前に加害者を止めるしかない。保護観察所、裁判所、NPOなどとの連携で加害者の治療、臨床ケアをしてほし い」と訴えた。

対等な恋愛関係を理解できない男たち

   昔からある男女の痴情とストーカーとどう違うのか。桐生正幸・関西国際大教授は「男性中心だった恋愛関係が、いまは対等になっています。これを男性が理解できず、新しい関係を作れない。やっちゃいけないことを学べない」という。

   これをどうやったら気づかせ変えられるか。加害者対策は民間で始まっていた。横浜のNPO法人「ステップ」は加害者を対象に更生プログラムを実施している。先の千葉・市川での事例を参考に、「もし自分だったら」と問う。元ストーカーやDVの加害者が語る。「なんでオレだけと怒り」「ひと思いに殺して自分も自殺しよう」―この誤りに気づかせるのが目的だ。

   「自分の所有物が勝手に出ていった」といっていた男性が9か月の参加で「彼女の生き方を尊重するようになった」という。別の男性は別れた妻と一緒に訪れた。妻は「意見を聞いてくれるようになった。変わった。顔つきまで変わった」と話す。しかし、参加者はごくわずかだ。大半のストーカーは自分がストーカーだと気づいてもいない。来ない人をどうするかが課題だ。

   だれだって恋愛には初めてがある。振られるのも当たり前のことだ。そこでいきなり殺すか。心理分析はともかく、ただの幼児化ではないのか。この思いがどうしても拭えない。

NHKクローズアップ現代(2013年12月12日放送「ストーカー加害者の告白~心の闇と対策~」)

文   ヤンヤン
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