インフルエンザ急速変異「治療薬が効かない」「ワクチン効用も低下」対策追いつけない?

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   インフルエンザにこれまでになかった異変が起きている。2009年に流行したH1N1型が変異して季節型として定着・流行する兆しが見え、高齢者に多いA香港型のワクチンの効きが落ちた。さらには、ワクチンの作り方に問題があることもわかってきた。医療関係者は危機感を強めている。

タミフル、アピアクタに耐性もつ新型H1N1が季節型として定着

   インフルエンザの流行が33都府県で警報レベルに達した。ウイルスはH1N1、A香港、Bの3つだ。H1N1は09~10年に大流行し、幼い子どもや糖尿病などの持病がある人に重症化が見られた。子どもの入院は1万4000人にもなった。これが今年(2014年)、季節性として流行し始めたという。

   国の研究班の座長、森島恒雄・岡山大教授の元に1月半ば以降の重症化の症例報告が集まっている。静岡こども病院に救急搬送された7歳の男児はウイルス性肺炎で呼吸困難に陥り、X線写真では片肺が真っ白に濁っていた。高熱が出てわずか9時間後という急激な進行で、処置が遅れれば命が危ないところだった。

   通常のインフルエンザ・ウイルスはノドや鼻の奥で増殖するが、H1N1は気管支や肺で増殖し、自力呼吸を危うくするのも早い。前回流行したときの重症化例では、気管支ぜんそくとかアトピー性皮膚炎とかアレルギー体質との関連が浮かび上がった。

   もうひとつの懸念は抗インフルエンザ薬のタミフルやアピアクタに耐性をもったウイルスの報告だ。札幌市衛生研究所が分析したH1N1の17検体の9割が薬が効きにくいタイプで、このウイルスは山形、神奈川、三重、大阪でも確認された。

   東北大大学院・押谷仁教授は「インフルエンザは大多数の人は軽症で薬を飲まなくても治るが、一部が重症化します。季節性だけで数百万人から1000万人がかかるから、分母が大きければ重症化例も多くなります」という。耐性ウイルスかどうかは一般の医療機関ではわからない。どの薬を処方するかも、地域での流行の型や耐性ウイルスの広がりを見て判断しないといけない。まさに手探りだ。

毎年ワクチン接種してても集団感染

   気になるのはワクチンが効かなかった事例だ。ワクチンには3つのウイルス型に対応するよう作られるが、群馬県太田市の特別養護老人ホームで昨シーズン、A香港型に対する効きが悪かったことが確認された。入所者は70人で、毎年全員がワクチンの接種を欠かさないのだが、昨年1月の2週間の間に46人が集団感染し、90代の男性が肺炎で死んだ。A香港型だった。担当医師は「ずっと集団感染はなかったのに、去年だけ。ワクチンの効果に疑問をもった」という。

   群馬県環境衛生研究所が調べたところ、ワクチンのA香港型に対する効き目を示す数値が、期待された値を大きく下回っていたことがわかった。国立感染症研究所は去年11月、ワクチンの効果が低下していたことを認める報告書を出し、その原因が製造方法にあったと明らかにした。

   ワクチンはウイルスを卵で培養して作る。ところが、ここ数年、期待通りのワクチンができにくくくなっていた。ウイルスが卵の中で死んでしまい、突然変異のものだけが生き残って、抗原性(ワクチンの効果)が変わってしまうのだという。今年のワクチンは効果をあげたらしいが、感染症研究所は卵から細 胞培養に切り替える必要もあるという。

   これについて押谷教授は「ワクチンへの信頼性がすべて崩れているわけではありません。ワクチンの効用は依然高い。インフルエンザ・ウイルスは変異と対応の繰り返しですが、研究はここ数年大きく進んでいます」と話す。

   ウイルスは子どもと年寄りにきつい。高齢化の中でのいたちごっこに妙手なんかあるのか。結局、話はうがい・手洗いに戻るのか。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2014年2月6日放送「インフルエンザ 2つの『異変』」)
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