2024年 4月 20日 (土)

「僕の精子、無料で提供」サイトで探して名前も素性も聞かず妊娠・出産する女性たち!男性側「ボランティア活動です」

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   衝撃のスクープだ。直前の7時のニュースでも流していた。「個人で精子を提供します」「ボランティアで」というネット上のサイトが、確認しただけで40以上もあって、実際に妊娠した女性もいた。日本の社会は倫理観を捨ててとんでもないところにいるというのだ。

   NHKの取材チームは提供者と受け取る女性11人に会い、メールなども入れると22人に接触したという。サイトはすべて匿名で身元も不明。倫理上の問題もあるし、感染症のリスクもある。にもかかわらず、望む女性は少なくない。

地下鉄出口やカフェで待ち合わせて受け渡し

   41歳の女性は昨年12月(2013年)に妊娠した。取材時には9週目だった。大学を出て就職し、仕事優先で婚期を逃したが、子どもが欲しかった。しかし、第三者の精子の提供を受けられるのは、法律上の夫婦(夫が不妊)に限られる。海外の精子バンクは数百万円もかかり長期休暇が必要だ。たどり着いたのが個人サイトだった。不安はあったが何人かと会い、信用できそうな相手から提供を受けた。何度か試みた末に妊娠した。「よかったです」と胎児のエコー画像を見せた。

   ある提供者ケイスケ(仮名)は30代の会社員だった。8年間に20人に提供し、5人から出産の報告があった。「目的は?」「結婚しにくくなるなか、子どもを生みたい女性はいる。何か自分でできないかという意識だ」と話す。精子受け渡しは「地下鉄の出口で待ち合わせて、受け取った容器に精子をとって、同じ場所で手渡す」という。安全性の認識があるとは思えない。

   もう1人のコウイチ(仮名)は感染症の検査結果を見せた。HIV、梅毒、クラミジアの3項目にチェックがあったが、検査を受けるのも仮名だ。「B型肝炎は?」「わからない」

   彼が会ったのは40代の女性で、カフェで話をしたが互いに本名は明かさず、話が決まるとコウイチは公衆トイレで精子をとって容器を手渡した。彼は複数の女性に提供を続けているという。

   取材した板倉弘政記者によると、女性は不妊の夫をもつ妻と未婚がほぼ同数で、女性同士のカップルもいた。男性側の動機はさまざまでとらえどころがない。金銭面では数万円の謝礼をとる例があったほかは、面談時の実費のみがほとんどだったという。「子どもを作らない夫婦の増加と未婚化が背景にあるようです」と話す。

エイズ、肝炎など感染症ノーチェック

   日本生殖医学会理事長の吉村泰典・慶大医学部教授は「感染症の懸念は2つ。自分で注射器で体内に入れることで腹膜炎などの危険があります。もうひとつが精子の中の感染症、エイズ、肝炎などです」という。

   産科婦人科学会の人工授精のガイドラインは、(1)法律上の夫婦(2)感染症の防止策(3)子どものために提供者の情報を保存するの3つが示されている。個人提供サイトはどれとも当てはまらない。危険きわまりないが、女性の側には年齢による強い焦りがある。

   全提供者を登録制にしているアメリカでも2年前、カリフォルニアの38歳の男性が感染症検査も受けずに4年にわたって328回46人に提供して14人を出産させたとして大問題になった。FDA(食品医薬品局)は男に停止を命じたが、規制には限界があることを認める。日本も事実上それに近くなっているのだろうか。

   国谷裕子キャスター「女性は産む権利があるといいます。ガイドラインは現実的ではないのではないでしょうか」

   吉村教授「女性たちは生まれてくる子どもを最優先に考えてほしいですね。提供者がわからないと必ず倫理上の問題が起きます。これをわかってもらいたいですね」

   30代の女性の未婚率は1990年には10.4%だったが、2010年には27.8%まで増えた。子育てをしながら働ける環境が整っていればこんないびつなことにはなるまい。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2014年2月27日放送「徹底追跡 精子提供サイト」)

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