官製ベア「中小企業」「非正規雇用」蚊帳の外…大手自動車下請けの賃上げ10社に1社

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   久々に春闘が動いた。「景気回復は個人消費につながる賃金上昇がカギ」という政府の要請に応える形で、自動車、流通の大手がベアで軒並みに数字を出した。バブルの崩壊以来、実に13年ぶりである。この官製ベアを安倍首相は自画自賛しているようだが、問題はこれが中小企業や非正規雇用の社員まで及ぶかどうか。動きはまだ「ほんの始まり」に過ぎない。

親会社からコストダウン迫られ「会社を守るのが先。賃上げは無理」

   自動車大手の富士重工業は今年度、北米の売り上げが伸びて過去最高の利益となる見通しだ。この利益を賃上げに回すか、新たな技術開発につぎ込むか。吉永泰之社長は「数週間考えました。最後に従業員の頑張りに期待して」という。要求3500円に2000円で応えた。

   群馬・太田市はその富士重工の下請けが集まる企業城下町だ。従業員700人の内装部品の1次下請け会社は今年度の売り上げは過去最高の見通しだ。労組は12年ぶりのベアを要求した。しかし、交渉の結果は800円だった。

   地元の信用金庫が行ったアンケートで、賃上げの広がりには限りがあることがわかった。対象の600社には2次、3次の下請けも多く入っている。「賃上げをする」と答えたのは約10%にすぎなかった。

   マフラーの部品を作る2次下請けの会社は頭を悩ませていた。従業員は25人。社長は「受注が増えたので賃上げするつもりだった」が、発注者から「コストを2.5%下げてほしい」といわれた。部品の単価は50円。利益率3%を2.5%下げれば利益はほとんどなくなる。

   賃上げを見送ったところもあった。プラスチック樹脂の2次下請けは去年新しい成型機械に3400万円を投じて能力をアップさせていた。アップさせないと仕事が他社へいってしまう。今年中にはほかの機械も更新しないといけない。「会社を守るのが先。賃上げは無理」と社長はいう。

   日本総合研究所チーフエコノミストの山田久氏は、「賃金は14年間下がり続けでした。この間、企業はコストダウンでしのいできたわけですが、その体質から抜け出せるかどうか。企業は経営戦略を変える必要があります」という。2次、3次下請けが浮上するには時間がかかる。

賃金上がらず物価・消費税は上がる!流通業界「パート従業員」家計直撃

   これが非正規社員となると、さらに状況は厳しい。全国に240店舗を展開するスーパーの「ライフ」は、従業員約3万人のうち75%がパートだ。1年半前、ほとんどのパート社員が労組に加入した。労組は今年初めてパート社員の賃上げを要求した。要求は時給を毎年全員10円上げる(定期昇給制度の導入)というささやかなものだった。正社員の仕事をパートが肩代わりする割合も増えている。時給はトップクラスでも、平均より20円も低い。「みんな店を愛している。このままだといいパートが辞めてしまう」

   しかし、経営側の計算では10円アップは2億8446円になる。毎年3億円近い人件費増は大きい。交渉は3回に及んだが、定期昇給制度は認められなかった。ただ、交渉の最後で「パートさんの能力に見合った時給の改定は、会社としても望むところ」と話が動いた。新しい賃上げの仕組みを考えることになった。

   山田氏は「流通業では非正規が70%、80%を占めます。非正規収入が家計を支える割合も増えています。格差の是正で所得分配を公平にした方が消費も底上げされ活性化されるのですが…」という。

   思えばこの10年、低賃金でも何とかやってこられたのは、物価も下がったからだった。しかし、4月からは消費増税だ。賃上げの広がりが遅れたら、それこそ余計なお世話ということになる。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2014年3月13日放送「賃上げは広がるか?~検証・春闘2014~」)

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