本物の「鮒ずし」作りたい!材料の絶滅危惧種ニゴロブナ養殖成功させたお母ちゃん

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   琵琶湖固有のニゴロブナでつくる鮒ずしは奈良時代からあったといわれるが、ニゴロブナが絶滅危惧種に指定され、いまは本物の鮒ずしを味わう機会もなくなった。ところが、滋賀県近江八幡市で鮒ずしの加工販売を行なう大島正子(51)がニゴロブナの養殖に成功した。

ようやく出荷したら「これはニゴロブナじゃないよ」

   ニコロブナの年間漁獲量は1988年には198トンあったが、現在は48トンにまで激減している。大島さんは米づくりをしていた両親の3人姉妹の長女として生まれ、京都のデザイン事務所で働き、グラフィックデザイナーの道を歩んでいた24歳のときに同業者と結婚した。ここまでは順調だったが、父親が食道がんで他界。長女だったことからデザイナーと米づくりの2足のわらじをはく羽目になった。しかし、米は作っても売れない時代で大赤字が続いた。

   そんなときに、「新潟では田んぼで錦鯉の養殖をしている」という話を聞き飛びついた。「鯉が育つなら鮒も育つはずだ」と、まず田んぼの池づくりを始めた。4か月かかって土を固め、水は琵琶湖と繋がっている西の湖から引き込み、業者から買ってきたニゴロブナの稚魚を放流した。

   養殖池に入り込んでくるブラックバスを手でつかんで駆除した。米ぬかを配合した餌代は年間100万円にのぼり、貯金はすぐ底をついた。しかし、養殖も3年がかりでようやく初出荷にこぎぎつけた。ところが、出荷するととんでもないことを言われた。「ニゴロブナではない」というのだ。鮒ずしはニゴロブナと他の鮒ではまったく味が違うが、稚魚の段階で見分けるのは難しい。

   二人三脚でやってきた夫から「次は天然の親魚を自分で育てるしかない」と言われた。自然の餌で育てようと、養殖場の田んぼをミジンコや赤虫、手長エビが繁殖しやすいように土壌改良し、葦も植えミニ琵琶湖づくりに取り組んだ。親魚を求め何度も漁師の元へと足を運びやっと手に入れた。

道の駅で直売!「うちのは川魚独特の臭みがまったくない本物です」

   そして5年、やっとニゴロブナの養殖に成功した。ようやく軌道に乗り始めたときに夫が肺がんのために45歳で他界する。ただ、孤立無援ではなく、2人の息子が支えとなった。

   現在、3つに区切った養殖池では1万7000匹ほどのニコロブナが育っている。春の今がちょうどニコロブナの漬けごろだ。大きな網を引き、魚を傷つけないように素早く水槽に移す。3日間、塩水の中を泳がせる。傷ついた魚の消毒と食べたものを全部吐かせるためだ。その後、塩漬けする。「大事な事は絶対に生きたままやるということです」という。

   6月に塩を洗い流し、一夜干しした後、うるち米のご飯をエラからたっぷり詰めて半年間、自然発酵させて鮒ずしができ上がる。近江八幡市内の道の駅「琵琶湖大橋プラザ」で直売している。「うちのは川魚独特の臭みがまったくない、本物の鮒ずしの味です」という。

   舘野晴彦(月刊『ゲーテ』編集長)「アイデアもすごいし行動力もある。すごい人ですね」

   岩上安身(フリージャーナリスト)「生態系を復活させちゃうんですからね」

   大島さんは成功の秘訣をこう語った。「素人でいること。知識や経験があったら、田んぼの池は作らず、メンテナンスのいらないコンクリートの池にしていたでしょう。素人でいたからいろんな疑問を持ち解決しながら養殖に繋がった」

文   モンブラン
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