軍事転用に引っ張りだこ日本の先端技術―『北朝鮮』無人機にも高性能デジタルカメラ

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   日本の先端技術を各国で軍事利用する動きが拡大している。韓国で相次ぎ見つかった北朝鮮のものと見られる無人機に、日本のデジタルカメラが搭載されていたのもその一例だ。日本の民間企業が開発した小型で高性能の先端技術を軍事に転用しようと、引っ張りたこだという。そこには、国家予算で独自の軍事技術を開発した時代が終わり、財政的な制約から民間が開発した技術を積極的に活用する流れに変わってきたという背景がある。

   防衛省もその流れに乗って、民間の先端技術をどう取り込むか、さらに他国で軍事用に使われる日本の先端技術をどう防ぐか―攻守2つの課題に取り組み始めた。

気象観測センサーに列を成した各国軍事関係者

   シンガポールで今年2月(2014年)に開かれたアジア最大の航空ショーには、世界の航空関連企業1000社以上が参加し、日本からも旅客機メーカーや民間空港との取り引きを目指し過去最多の42社が出店した。

   初参加した社員170人の「ソニック」が力を入れたのは気象観測用のセンサーだった。空港に設置し、上空150メートルまでの乱気流を測定できる自慢の製品だ。東南アジアの民間空港に売り込む狙いだったが、ブースを訪れたのは世界各国の軍事関係者ばかりだった。

   ロシア海軍の関係者は「海軍の航空部隊にとって興味深い製品」と話す。アメリカの研究機関の幹部も「空母に着艦するパイロットに乱気流の警告を出せる」と強い関心を示す。予想外に展開にソニックの関係者は、「軍のマーケットはまったく考えていないので、難しい話になってきた」と戸惑いを隠しきれない。

   これなどはパイロットの安全確保のための転用でまだいいが、こんなのもある。コンピューター制御で自主航行する無人ボートを開発した社員50人の会社「コデン」のケースだ。海底の地形を超音波で調べデータを無線で送信できるため、港湾やダムの測量に使われている。無線が途切れたり、電池の残量が少なくなれば自動で元の場所に戻ってくるという優れものだ。

   ところがここ数年、イスラエル、イラン、リビアなど思いもよらない国からの問い合わせが増えている。「より大きなボートを製造して欲しい」などの注文や用途や素性を明かさないケースもある。戦争やテロに使われれば企業イメージに大きな傷がつく。そこでコデンは3年前から、輸出する際は現地に社員を派遣して測量に使われているかどうかを確認することにした。年に1度、メンテナンスを理由に製品を回収しチェックもしている。

防衛省が頭悩ます「どうしたら流出防げるか」

   防衛省も優れた民間技術の活用に動き出した。昨年、民間企業の技術を対象に調べた「わが国の共同開発/研究要領の現状と問題点」と題する300ページに及ぶ内部資料がある。ロボットやセンサーなど最先端の技術を防衛装備に活用しようという狙いで作成されたが、これを受けた形で防衛省内に「技術管理班」が新設された。

   防衛装備に転用可能な民間の技術を把握する一方、他国に転用される恐れのある技術について輸出審査を慎重にするように関係機関に働きかける役割も担っている。日本の優れた技術が海外で知らぬ間に軍事に転用されるのを防ぎなら、同時に日本の先端技術を防衛装備に活用し、輸出にも役立てようという狙いなのだが、実効ある体制ができるのかどうか。

   安全保障に詳しい一橋大学の秋山信将教授はこう解説する。「他国からの激しいキャッチアップのなかで、限定的ではあるけど、調達コストが安くつくことが防衛省に求められています。でき上がった装備品を海外の市場に広げれば単価を安くできることも目的として挙げられているのではないでしょうか」

   国谷裕子キャスター「民間技術が他国の軍事に転用されるのをどう防ぐか。管理強化で実効ある流出防止は可能でしょうか」

   秋山教授「100%防ぐのは不可能です。ある技術を出すか出さないかについて、最終的には技術の評価とともに政治的な判断が必要になります。経産省や国家安全保障会議、あるいは政府が技術移転することへの説明責任が問われると思います」

   安倍内閣はこれまでの武器輸出原則禁止に代わる新たな「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。日本の技術がテロに使われたり、紛争を助長する武器として使われるのをどう防ぐのか。運用面の課題が指摘されている。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2014年4月9日放送「日本の技術はどこへ~拡がる『軍事』転用~」)

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