2024年 4月 19日 (金)

深刻!野生動物「増え過ぎ被害」農作物食い荒らし人も襲う…過疎化で生息域拡大

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   いま日本全国で野生動物の数が急増、生息域も拡大して、農作物や人的被害が深刻化している。中山間地の過疎化が野生動物と人との境界を変えてしまった。農産物被害は4年連続で200億円を超え、国は鳥獣保護法を改正して保護政策を転換させたが、境界線再構築の道筋はまだ見えない。

街近郊で暮らすようになったサル!山の中の木の実より農作物の方が美味しいし栄養たっぷり

   ニホンザルの生息域は2003年には1978年の1.5倍、都市部では4倍に拡大している。活動域は農村にまで及ぶ。山の中の木の実より、栄養価が高く数が多い農作物の方がエサの摂取効率がいいからだ。

   鹿児島・さつま町で収穫期にあるダイコン、カボチャなどが食い荒らされる映像があった。サルは数十頭、人手がなく手の打ちようがない。栄養のいいエサは個体数も増加させる。

   東洋大の室山泰之教授らが行った出産数の調査では、屋久島では3年に1回、10年で3頭だが、畑を荒らされている三重・大山田では10年で7頭だった。「増えると、また新しい被害地が広がる。食べさせないようにしないと連鎖は断ち切れません」と室山泰之教授はいう。

   鹿児島・南さつま市坊津町では、4年間で主に女性のお年寄り60人が噛みつき猿の被害を受けた。片足のないオスのはなれザルで、のらネコに住民が与えるエサがねらいだった。ついに昨年(2013年)2月、町は写真入りのポスターまでつくって懸賞金20万円をかけた。サルは半年後に山中で射殺した。

   サルによる危害は各地にあり、静岡・三島市周辺では10年、118人もの被害を出した。長野・上田市では今年すでに27人。北九州、下関、日向など、どこも生息域の変化の結果だ。森林総合研究所の大井徹氏は「当然の流れだ」という。かつては両者の間に緩衝帯があった。薪や炭をとるために10年周期で伐採・植林する樹林帯だ。ところが、需要がなくなり、過疎化で人も減り、木が繁ってサルにはいい環境ができた。そして、その先に農作物があった、繁殖力も高まったということなのだと解説する。

道路の凍結防止剤…シカにとっては冬の貴重な塩分

   長野ではシカの被害である。2000年までは3万頭前後で推移していたのが、いま10万5000頭だ。信州大の竹田謙一准教授が行った環境異変の実態調査では、森林の食害は長野県全域に及んでいた。生息域は標高の高いところに拡大して、南アルプスでは79年にお花畑だったところが、08年には山肌むき出しのガレ場と化していた。

   長野県の観光客は年間2000万人。登山者が期待する風景が消えつつある。自然破壊は経済上のデメリットにもなるわけだ。しかも、その観光開発が思わぬ作用をしていることもわかってきた。

   雪に覆われた八ヶ岳山麓の自動車道路に、深夜、多数のシカが現れ、除雪した路面をなめ始めた。路面の水分を分析してみると、塩分(塩化ナトリウム)が通常の道路の30倍もあった。散布された凍結防止剤である。

   長野県はこの10年で700キロ道路を延長した。凍結防止剤の散布量は3倍になった。これがシカの生息域を拡大させたという。塩はシカの生命維持に欠かせないが、通常は土や岩からとっている。雪に覆われた冬は厳しい季節になるはずが、道路から貴重なミネラルを得たことになる。

   長野県は捕獲数を10年で4倍に増やしたが、肝心のハンターの数はピーク時の5分の1だ。一方で、牧畜用の牧用地の開発はシカに新たなエサ場を与えた。絶滅はさせてはいけないが、どうやって共存のバランスをとるのか。小諸市は全国で初となる野生動物の専門家を常勤職員に採用して、共存の道をさぐる。専門家は現場にこそ必要だ。ここまで増えさせてしまったのも、現場に目がなかったためだろう。それでなくても行政の動きは遅い。日々の生きた情報が霞ヶ関に届かないといけない。道はそこからだろう。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2014年5月16日放送「急増する野生動物被害~拡大の実態~」)

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