2024年 4月 19日 (金)

ウクライナあす大統領選できるのか?最有力は対ロ融和派…国家分裂・全面内戦の瀬戸際

   ウクライナが混乱を極めている。ドネツクなど東部では一方的な独立宣言で親ロシア派が突っ走り、首都キエフなどでは反ロシアの民族主義が勢いを増し武力衝突も起きている。汚職にまみれた前政権を追放して希望を託された暫定政権は、国内対立に打つ手がない。25日(2014年5月)の大統領選挙ははたして行われるのか。

プーチンも持て余す東部親ロシア派の暴走

   ドネツクの州政府庁舎は武装した親ロシア派が占拠を続けている。バリケードにはロシアの政党「祖国」の旗が翻っていた。旧ソビエト連邦諸国の再統合を目指す政党だ。親ロシア派支援を隠そうとしない。庁舎内にはモスクワから送り込まれた「祖国」の工作員がいた。住民投票の強行もリードした。「私の他に数百人が活動している」

   物資の支援も、NHKのカメラの前で堂々と見せた。国境警備隊を買収して検問を突破したトラックが州庁舎へ乗り付ける。食料、迷彩服、防弾チョッキなど下ろす映像を占拠した放送局から流す。ロシアが後ろ盾だという宣伝である。

   EUの定期首脳会議は7日、ロシアの関与を非難して経済制裁を強めた。ロシアのプーチン大統領は同じ日、親ロシア派に「暫定政権との対話が重要だ」として住民投票の延期を求めたが、親ロシア派はこれを無視して11日に住民投票を強行した。「まともじゃない。バカげてる」と投票しない市民も多く、不正行為も伝えられて、投票自体の正統性にも疑義があるが、代表のプシリン氏は「9割が賛成した」として、一方的に独立を宣言し、ロシアに編入を求めると表明した。

   プーチン大統領は先のクリミア編入と違って、東部問題には距離を置いている。住民投票の延期を求めたが、投票結果は「尊重する」として、事実上黙認した。東京財団研究員の畔蒜泰助氏は、ロシアの狙いを「東部の動きをテコに、親欧米色の強いウクライナが、EUさらにはNATOに加盟するのを阻止することだ」という。ウクライナ東部をロシアが編入して「国家分裂」してしまっては、かえって具合が悪い。大統領選挙に反対しないのもそのためだと解説する。

   しかし、余勢を駆って「祖国」は大統領選挙阻止に動く。東部の数百か所で道路を封鎖して暫定政府の活動と選挙運動を止め、各地で物資を配って協力者を増やす。「すべて計画通りだ。いずれ東部はロシアに編入される」

ウクライナ民族主義過激派は武装強化「ロシアと断固戦う」

   大統領選挙には親欧米のティモシェンコ元首相、欧米重視だがロシアとも関係を保つ融和派のポロシェンコ元外相、ウクライナ民族主義過激派「右派セクター」のヤロシ氏が立候補している。問題はヤロシだ。キエフ郊外の「右派セクター」の拠点には装甲車が配備され、メンバーは武装して兵士としての訓練を受けている。これを東部へ送り込んで、介入するロシアと闘うのだという。ヤロシは「主権を守るために断固戦う」という。

   こうした状況に、前政権を追放して希望に燃えた改革派の多くは、いま失望の中にいる。唯一の希望が融和派のポロシェンコだ。主張は「ひとつのウクライナ」。投票すれば東部の代表も新政権に参加させるという。最新の世論調査では30%超の支持を集め、最有力と目されている。

   ただ、選挙が成り立たなければそれっきりだ。畔蒜氏は「東部を除いた地域では選挙ができるだろう。その上でポロシェンコ氏が親ロシア派との直接対話に持ち込めるかどうかだ」という。

   その東部ですら「茶番だ」と笑う住民はいる。みなそこに住んでいて逃げる所はない。西ウクライナもしかり。もともと人も経済もひとつだった国である。ウクライナ人の賢明な選択を祈るしかない。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2014年5月22日放送「国家分裂は避けられるか~緊迫ウクライナ大統領選~」)

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