2024年 4月 19日 (金)

九州電力・川内原発 再稼働へ…防御設備では守りきれない安全!最後は「人頼み」

   原子力規制委員会は九州電力・川内原発1号機と2号機に近く「合格書」を出し、秋にも再稼働という見通しだ。九電は津波を防ぐ防護壁などの設備を急ピッチで増強し、東京電力福島第1原発のような事故は起こらないとしているが、設備増強ではカバーしきれない問題も浮かび上がってきている。人的課題だ。

はたして可能か?作業員2000ページのマニュアル習得

   キャスターの国谷裕子「福島の事故では安全神話にとらわれ原発事故を防げませんでした。事故が起きたあとも拡大防止や影響の緩和に向けた十分な対応も取られていませんでした。対策は取っていたとしていますが、想定外の事態が起こりうるということが証明されました。想定外の事態への鍵を握っているのが、人間の対応力です」

   安倍内閣は規制委のOKが出た原発から速やかに再稼働していくとしているが、NHKが先月(2014年6月)に行った世論調査では、「安全性を確認した原発の運転再開を進めるという政府の方針」に、賛成21%、反対41%、どちらともいえないが32%だった。

   国谷「ハードの強化だけでは防げない重大事故も考えられます。国が定めた基準では、人間の対応力を高めることを求めています。作業員はどんな行動を取ればよいのか。九州電力がその根幹としているのが詳細なマニュアルです。福島事故の教訓がどう生かされているのか。現場で行われている訓練の取材を申し込みましたが応じてもらえませんでした」

   「クローズアップ現代」は四国電力の伊方原発にも取材を申し込み、その訓練の様子を伝えた。訓練はすべての電源が失われる事態などを想定して行われ、作業員はマニュアルに基づいて行動する。マニュアルには緊急時に手動で動かすためのボルトの外し方まで細かく書かれていた。マニュアルは2000ページ以上もあり、すべてを習熟するにはかなりの時間がかかる。

   さまざまな事故の原因を人間工学の視点から研究している小松原明哲教授(早稲田大学生活工学研究室)は「福島第一原発の事故で実際にあった事例を重視しています。福島では原子炉への注水が途絶えることを懸念して、所長は消防車を使うことを考えましたが、マニュアルにない手順だったため誰も対応できず炉心の冷却を遅らせる原因となりました」と語った。

九電は「クローズアップ現代」の取材拒否!相変わらずの秘密体質

   国谷は「四国電力のマニュアルは2000ページもあります。それを習熟しないといけないわけですが、各電力会社はどう徹底した訓練を行っているのでしょうか」と、スタジオのNHK科学文化部の管谷記者に聞く。

「原発の新しい規制基準に対応するため、緊急時の設備というのは本当に数多く導入されています。そのためマニュアルの量も膨大になっています。NHKでは電力会社9社にアンケートを実施しましたが、どの会社も伊方原発と同じように、まずはこのマニュアルの習熟を優先的に取り組むとの回答でした。
   事前に事故の想定を伝えずに行うブラインド訓練を導入するなど、模索が始まった段階です」

   国谷「九州電力は取材に応じてもらえませんでした。それ以外の電力会社も外部からの検証を受け入れることには、まだ消極的だというふうに感じます。電力会社の姿勢にはまだ甘さが残っていて、福島事故前とあまり変わっていないのではないかと感じます」

   東北大学の北村正晴・名誉教授「基本はマニュアルが整備されていて、そのマニュアル通りにきちっと事を行えるというのは、出発点として第一条件だろうと思います。それ自体なかなか大変なことですから。でも、訓練と普段やっている作業と関連づけたりすることで、理解、習熟されると思います。

   次にマニュアルを超える事態に対してどう対応力をつけていくのか。これが一番難しい問題です。その場での判断や想定外のことへの判断が問われるのは所長です。どうやってそうした力を鍛え上げていくのか、まだ手探りの状況が続いているように思います」

   そこまでやらなければ安全性が確保できない原発というのは、果たして経済原理にあっているのか。電力会社の内部には省エネ火力こそ今後の主流だという考え方が広がり始めている。

ナオジン

NHKクローズアップ現代(2014年7月7日放送「原発新基準 安全は守られるのか」)

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