2024年 4月 24日 (水)

「男らしさ」もうやめたい!幸せ度低い日本の男性「夫や父親はかくあるべし」に縛られ生きづらい

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   先月出た「男女共同参画白書」に気になる数字があった。「いま幸せか?」という問いに、イエスと答えた女性は34.8%なのに、男性は28.1%と低かった。国際比較でも、この男女差は際立って大きい。なにが日本の男を生きづらくさせているのか。NHKが全国の10代から80代の1081人にアンケート調査ををしたところ、浮かび上がったのは「男はつらいよ」だった。

大阪市「男性の悩み相談」に年間300件以上

   生きづらさを感ずるのは「仕事での人間関係」が断然多く、次いで「収入の不満足」「労働時間の長さ」「家族との関係」だった。さらに、そう感じる理由では、「夫・父・恋人として求められる役割」と「男らしさという幻想」が合わせて341人もいた。求められるさまざまな男性像と現実とのギャップを埋められずに悩む男たちの姿が見える。

   ナマの声は一層鮮明だ。「家計を支えた上にいろんなことをいわれると疲れてしまう」(50代サラリーマン)、「男としてダメなまま生きていくのか、不安」(20代学生)、「一人前の男になれない私は生きづらさを感ずる」(30歳)、「女性が男に期待するのはやめてもらいたい。自分には不可能」(48歳)、「世帯主、父、跡取り、肩書き、見栄とか変な鎧をぬぎ捨てて裸になりたいときもある」(60歳)

   医薬品メーカー勤務の54歳は、妻と長男の3人暮らし。会社の往復3時間、住宅ローンあり。「男は外で働き一家を支えるもの」と頑張ってきたが、昨年(2013年)、多発性筋炎という難病に罹った。「家内が仕事ができれば、私も治療に専念できるが」というが、女性の賃金が安いことも男性の重荷になる。病気を抱えながら大黒柱を続けるしかない。

   待望の長男を授かった浅野保照さん(37)はイクメンで格闘していた。自動車部品メーカーの正社員で、深夜勤も休日出勤もある。妻は専業主婦だが、浅野さんは子育てにこだわる。疲れがとれないまま仕事にいくことも多い。「気がついたら夜になっているという感じ」。ある意味で「男らし さ」を突っ張る。

   大阪市は10年前、全国で初めて「男性の悩み相談」を開設した。年間300件以上の相談がある。臨床心理士などが電話対応している。Aさん(36)は2年前の離婚後、ここへ通う。20代で起業し、高級野菜をホテルやレストランに卸している。妻と仕事を分担して公私とも順調だったが、あるとき妻の両親から「娘にもっと楽をさせてやれないか」といわれた。Aさんは妻にもいわず、自分で背負いこんだ。次第にストレスがつのり、夫婦間もぎくしゃくして離婚に至る。

   2年してたどり着いたのが、山本五十六の言葉だった。「苦しいこと、いいたいこと、不満…。それらをこらえていくのが男の修行である」というあれだ。結局、男らしさに縛られているのだが、Aさんは「この言葉はいい」という。

社会・家族・男女関係の変化についていけず…

   横浜市立大の田中冨久子名誉教授は「男らしさなどの価値観は20歳ころに定着します。以後の更新はむずかしい」という。だから、男女の役割が多様化した現実に適応するには、幼い頃から教え込まないといけないのだと話す。

   伊藤公雄・京都大大学院教授はこう解説する。「社会も家族も変化しているのに、男はかくあるべしから抜け出せないでいるんです。人に話すと弱音を吐いたとみられるから、妻にもいわないとか。相談窓口は相談してもいいんだよと知らせることで、男性を変えないといけない」

   作家の赤坂真理さんは「女性が求める男性像はコロコロ変わるんです」と笑う。「草食男子でも、いざ作りあげてみたら、あれっ、違うぞと。でも、男はすぐには変われない。聞いてあげることも大事ですよ。発見がある」

   いま劇団ハイバイの「おとこたち」(脚本・演出岩井秀人)という舞台が話題だという。「生きづらい」男たちの群像劇らしい。観客の男性が「身につまされた」「打ちのめされた感じ」「あれを見てとみんなにいいたい」と語る。だが、どうも乗り気になれない。パロディーにもならないのではないかと嫌な予感がする。古い世代から見ると、男たちが弱くなったように見えてしかたがない。

NHKクローズアップ現代(2014年7月31日放送「男はつらいよ2014 1000人『心の声』」)

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