2024年 4月 20日 (土)

増え続ける無縁墓―過疎化・少子化でお参りする家族がいない!不法投棄される墓石

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   墓地や霊園の墓石の撤去が進んでいる。墓の所有者に連絡をとってもナシのつぶてで、無縁墓が地方から大都会へと広がり、先行きお参りする人がいなくなるのを見越して墓仕舞いするケースも増えている。

   親から子、子から孫へと受け継がれ守られてきた墓は、命日やお彼岸にお参りし、亡くなった親や親しかった兄弟、先祖との出会いの場でもあった。その墓をめぐって日本人の心が揺れ動いている。いずれ無縁墓になるなら墓はいらない、樹木葬形式の共同墓地か好きな海へ散骨してもらうのもいい。墓とはいったい何なのか。

広島の寺では1基2500円で引き取り

   民間調査機関のアンケートでは、今も8割近い人がお墓参りをすると答えている。その一方で、自分が亡くなった後にお墓がどうなるのかという不安を抱く人も増えている。年間120万人が亡くなり、その数は2040年まで増え続ける。並行して地方では過疎化、大都会では少子化が進み、世話する人がいなくなり維持・管理できない墓が増え続ける。

   そのさまよえる墓を浮き彫りにした映像が番組の冒頭に登場した。上空から撮影した淡路島の一角に白い物体が山積している。記者が取材すると、森林の中に現れたのは不法投棄された1500基もの墓石だった。兵庫県・淡路島県民局の担当者は「この数ですから、撤去を税金使ってやるとなると予算化にも厳しいものがある」と頭を抱える。誰が不法投棄したのか。

   墓石に記された「○○石材」の文字を頼りに岡山県の老舗の石材店を訪れた。聞くと、捨てられた墓石の一部はこの石材店が墓地から撤去し、運搬業者に処分を任せたものだった。通常、無縁化した墓は遺骨を墓所の一角の無縁塔の葬り、撤去された墓石は運搬業者によって処分場に運ばれ、細かく砕いて道路工事用の砂利として再利用される。費用は1トン5000~1万円。運搬業者はこの支払いを嫌がり、石材店に無断で不法投棄していたのだ。

   こんなケースも見つかった。広島県内に墓石を有料で引き取るお寺があるという。山道を30分ほど登ると、突然、目の前に整然と並んだ膨大な墓石が現れた。その数7万基という。寺の三島覚道住職によると、14年前に石材店から墓石の引き取り先がなく困っているという相談を受け事業を始めたという。引き取り費用は相場より安い1基2500円。住職が供養もするとあって中部地方や関西から墓石が持ち込まれている。

   住職は「中にはそこらに埋めておけばいいという墓屋さんもおられるけども、供養してあげたいなと思って始めました。ここは50年、100年たっても引き取ることができる広さを持っています。みなさんがどこから持ってこられても全部引き取ることができます」と話す。

   それにしても、大量の墓石であふれかえる背景とは何か。宗教学者で総合研究大学院大学の山折哲雄名誉教授は根底には家族制度の崩壊があると次のように指摘する。

「日本人の宗教の一つの中心をなしていたのは『家の宗教』としての先祖崇拝でした。これがガタガタと崩壊し始めた。その結果、伝統的な家制度の中で作られたお墓信仰は崩壊せざるをえなくなったんです。現代人は魂の行方を信じることができない。私自身がそうです。魂を思わなくなってしまったとすれば、死後の問題、墓の問題をどうするかという悩みに直面しているということです」

墓は誰のものか...残された家族の負担大きい散骨

   お墓に詳しい第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員はこう話す。「いま終活がブームになっていて、自分が死を迎えた後どうするか、生前に考えておこうとする人が増えています。墓はいらない、遺骨を砕いて山とか海にまく散骨がいいとか。ところが、残された人にとって墓の機能は、亡くなった人と対峙する非常に大きな意味があるんです。

   墓がないとどこに手を合わせるか分からないという問題があります。残された人の負担にならないように海への散骨がいいというが、亡くなられた人に会うために、わざわざ船をチャーターして供養する人もいて、かえって負担をかける結果になっているんです」

   国谷裕子キャスター「無縁化したくないと思う一方、墓はいるのかいらないのか悩んでいるんですよね。何が考えるポイントになるのでしょうか」

   小谷研究員「残された人がいないと墓はいらないんです。残された人が死者を忘れないというのが大事で、残された人がお参りをしてくれる存在かどうかがポイントだと思います」

   現代人は魂の行方を信じることができない。本当にそうだろうか。誰にも死後の魂の行方は分からない。死後のことは分からないというのが真実だろう。だからこそ墓がいるのかいらないのかに悩み、答えが見つからず樹木葬だ、散骨だと迷うのだろう。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2014年10月8日放送「墓が捨てられる~無縁化の先に何が~」)

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中