2024年 4月 20日 (土)

「私たちは香港人!中国人じゃないんだ」北京政府の『政治・経済押し付け』に若者たちの反乱

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   香港の騒乱が収まらない。返還から17年、これほど揺れたことはなかった。長い植民地支配で政治意識は低く、民主的な自治の経験も乏しかった住民が政治に目覚め(覚醒と呼ぶ)、「香港人」というアイデンティティーを打ち出しているという。何が彼らを動かしているのか。

   直接的には中国政府が出した3年後の行政長官選挙の仕組みだ。18歳以上の500万人が1人1票を行使する初めての民主選挙だが、候補者は中国寄りの指名委員会が選ぶとされた。これでは民主派の候補が出る余地はない。民主とは名ばかリだ。

   もうひとつが6月に出された香港統治のあり方をまとめた白書。この中で「高度の自治権は中国政府が授けたものだ」とあった。これにも反発する。1997年の返還で、英中両国は「1国2制度」で合意した。香港は今後50年間、高度の民主的自治を維持するという内容だった。

「1国2制度」守り切れるか

   先月28日(2014年9月)、数万の学生、市民が抗議のデモを行い、政庁舎前の道路を占拠した。政府は特殊部隊を投入して大量の催涙弾を投じたが、鎮圧には失敗した。デモ隊は傘で催涙弾を防いで「傘革命」と称し、士気は高まって、10月1日には10万人規模にふくれあがった。

   19歳の学生は「中国政府の強制に自分らしさを失いたくない。香港人としてのアイデンティティーを守る」と語る。とりわけ言論統制への反発が強い。「自分の未来は自分で決める。そのためには情報が必要だ」

   21歳の学生は母親と口論していた。母親は「中国は14億人、香港は700万人。政治的要求なんか無駄だ」という。学生は「こうなったのは政府の監視ができないからだ。ここは中国じゃない。香港なんだ」

   背景にあるのは、中国の政治的経済的影響力の増大だ。返還時は香港の経済力は中国のGDPの16%を占めていた。それがいま3%だ。大陸の経済はそれだけ伸びた。経済の大陸依存が強まって、香港市民の生活基盤が揺さぶられている。

   端的な例が不動産価格の高騰だ。大陸から巨額の投資が流れ込んで、若い世代はもう家を買えない。香港では家をもって一人前、結婚もできるという感覚がある。それができなくなった。「37平米のアパート、6300万円」の札の前でカップルが「高い、高い」と笑っていた。

   政治面では2012年、政府は中国式の愛国教育を導入しようとした。学生が反発して座り込みを続け、政府が撤回した。学生にはこれが「成功体験」になって、今回の運動につながったといわれる。

欧米の批判に中国政府「内政干渉だ」

   欧米でも各地で香港の学生を支持する集会が開かれている。英のキャメロン首相は、「1国2制度は英中の合意だった。香港の自由は保障されているはず」と発言した。

   先の米中外相会談後の会見で、ケリー国務長官は王毅外相の面前で「自治に支えられた開かれた社会と法の支配が香港の安定に不可欠だ」と話した。王外相はこれに「内政問題だ。中国の主権を尊重すべきだ」と反論した。

   中国政府が方針を変えることはあるまい。香港を特別扱いにすれば、チベットや新疆ウイグル自治区にはね返るのは目に見えているからだ。立教大の倉田徹准教授は「返還で主権と領土は戻ったが、心の返還はできなかった。北京には自信と不安の両面があります。香港の民主化は体制への脅威だからです」という。大陸からは年間4000万人が観光に来る。中国にはない出版物もある。メディアもネットも自由だ。これが大陸に波及するのが怖い。安心できないのだ。

   行政長官と学生との話し合は流れ展望はまったく見えない。学生たちの作った垂れ幕に、「このまま黙って生きるより、声をあげて死にたい」というのがあった。死人が出るようなことにはなってほしくないが、北京が耳を貸すはずもない。「香港人」がどこまで通用するか。これがキーワードかもしれない。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2014年10月9日放送「若者たちの『反乱』香港デモの深層」)

文   ヤンヤン
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