「人生の最期」決めるのは自分か家族か...意識ない患者増加で「延命治療」に悩む医療現場

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   人生最期の時を迎え延命治療をどうするか。決めにくい問題だ。厚生労働省や医学界が延命治療についてまとめたガイドラインがある。「どの段階までの延命治療を希望するのか」「人工呼吸器をつけるのか」「人工栄養を入れるのか」「心肺停止になった時に蘇生措置を行うのか」など、細かく選択肢を提示し、終末期の患者や家族に意思を確認することになっている。

   ところが、患者の意思を確認したくとも、意識がなかったり患者の思いが分かる家族がいないケースが増え、医療現場の医師が判断できない事態が珍しくなくなっている。決められない患者の最後を誰がどうやって決めるのか。

「医師が勝手に決めるわけにはいかない」

   東京・荒川の木村病院は、入院患者の9割以上を高齢者が占める地域の中核病院だ。肺気腫で入院し悪化して意識のない女性患者は、意識のあるうちに自分の意思を示し人工呼吸器など一切の延命治療を拒否していた。新潟から単身上京し、独身を通しながら家政婦として40年間働き続け、家族に迷惑をかけたくないと、70歳になってからもヘルパーの仕事を続けてきた。病気になったことも家族に知らせず、延命治療を拒否していることも伝えていなかった。

   女性の相談を2年間受けてきた病院のソーシャルワーカ―は、「日々の会話の中で『延命治療を受けたくない』『これまで十分生きてきた。好きなこと、やりたいこともできた』と話していました。自分のこと他人に託すことは望まれないと思います」という。

   それでも木村厚院長は新潟の女性の実家に連絡をした。家族が延命を希望するかもしれないからだ。連絡を受け、新潟から駆けつけた82歳の妹は、「私が来るまで頑張ってくれていた。ありがとう」と何度も感謝の言葉をかけ、涙を流した。妹は姉の意思を尊重して延命治療をしないことに同意し、姉は息を引き取った。30年ぶりの再会が最後になった。

   今年(2014年)8月下旬、路上で倒れた男性は病院に搬送されたときは酸素吸入器が付けられ、重い脳梗塞ですでに意識はなかった。木村院長は都内に住む兄に電話し、延命治療を続けるかどうかを確かめることにした。30年間疎遠だった兄からは「時間とともに逝くのが普通だと思う。先生が一番良いような措置をしていただければよろしいんじゃないですか」と、延命措置を希望しないことが伝えられた。

   しかし、病院は男性の延命治療を続けることにした。木村院長は「自分で自分の最期を決める権利があるわけですから、医師が勝手に決めるわけにはいかない。その人の持っている権利を考えていかないと...」と話す。

諏訪中央病院・鎌田實名誉院長「書面で自己決定を表している人は3%」

   長年、高齢者医療に携わってきた諏訪中央病院の鎌田實名誉院長はこう語る。「医療はまず助けることで進歩してきました。ここ10年ぐらいは、最期の時を迎え、その人がその人らしくその人に沿った応援をしてあげようと変わってきています。しかし、一人暮らしの方が多くなって、何を考えていたのか、最期はどうあったらいいのか分からないことが多くなりました。木村先生のような優しい方は、ますますどうしたらいいのか分からないで延命治療を続ける。悩ましいですね」

   厚労省が行った「延命治療を希望するか」という聞き取り調査によると、「希望しない」37%、「どちらかというと希望しない」34%、「希望する」11%という結果が出ている。

   国谷裕子キャスター「最後まで治療してほしいという人、してほしくないという人、まちまちですね」

   鎌田院長「絶対に忘れてはいけないのは11%の延命治療を希望するという人がいることです。1回きりの人生だから生き続けたいと思っているんです。医者は勝手に決めてはいけないよな、と苦渋するわけです」

   国谷「いま超党派で尊厳死法案の国会提出が検討されています。延命をやめても医師の責任は問わないという内容ですが、これには賛成ですか」

   鎌田院長「医師にとってはありがたい大切な法案だと思うが、僕は積極的には賛成していません。悩んでいます。法律で決めることではないと思うからです。実際に延命治療について書面で自己決定を表している人は3%しかいません。命の主人公は自分なんで、もっと時間をかけて自分の命を決められるような日本になることが大事です」

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2014年11月19日放送「『最期のとき』を決められない~延命をめぐる葛藤~」)

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