住宅街を襲う「建設残土」家のすぐ裏に巨大な人工の山!崩落して死傷者や家屋押し潰し

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   住宅地近くにうず高く積み上げられた建設残土の崩落事故が相次いでいる。10月(2014年)には横浜市緑区で裏山が崩れてアパートを押し潰し、男性1人が死亡した。裏山は自然のものではない。残土業者が持ち込んでいたもので、横浜市は4年前にコンクリートの囲いと排水溝を設置するよう是正勧告したが、業者は資金がないと放置していた。

   2月には大阪・豊能町で巨大な残土の山が180メートルにわたって崩れた。幸い死傷者はいなかったが、道路が直撃され、直前に路線バスが通過していた。近所に住む木村滋信さんは「崩れた土砂がこっちに迫ってくるのがわかりましたよ」と話す。残土業者はここを家庭菜園にするといって大阪市の許可を得たが、実際は建設残土の捨て場だったのだ。残土の山は高さ60メートルにもなり、1日100台を超えるトラックが捨てに来ていた。

1年間に東京ドーム70杯分...もう捨てるところがない

   地下鉄工事やビル建設で出る土は、その場で再利用したり別の工事現場で使ったりするのだが、約3割が使われずに建設残土となる。全国で9000万立方メートル、東京ドーム約70杯分である。

   なぜ、建設残土が住宅地近くに『貯蔵』されるようになったのか。運搬業者は「受け入れ先がなくなった」と話す。運搬業者を取材したNHK大阪の杉田沙智代ディレクターはこう説明する。「これまでは建設残土の置き場は山間にあったのですが、容量がいっぱいになったり施設にコストがかかったりして採算が合わなくなり、新たにできたのが住宅近くでした」

   しかも、従来より安い価格で引き受けるようになった。それまでの相場は10トン当たり8000円だったが、これが5000円になった。これで運搬業者が殺到し、豊能町の残土は容量の3倍にもなっていた。受け入れ業者は「5000円では防災工事はできない。安全対策はなく、ただ土を流し込んでいるだけ」と話す。

   桜美林大・藤倉まなみ教授はだれも責任を取らない実態が背景にあるという。「対応できる法律がないんです。産業廃棄物の不法投棄は罰金が3億円にもなりますが、建設残土は100万円。建設業者は運搬業者に渡せばその後のことは責任がない、運搬業者は受け入れ業者に運ぶだけ。ルールがないため野放しになっているのです」

17府県に「残土条例」県外からの運び込み拒否した千葉・君津市

   自治体としてもこの事態になんとか対処しようとしている。17府県に「残土条例」があり、千葉県は県職員が4か月に1回現場で検査をしている。高さが基準以下か、傾斜が急な角度になっていないかなどをチェックする。「30度以下なら崩壊の恐れは少ないと判断します」(県職員)

   県よりもさらに厳しい基準を設けたのが千葉・君津市だ。1年に100万立法メートルの建設残土が持ち込まれ、その9割以上が県外の東京や神奈川からのものだった。崩落事故も相次ぎ、平成24年に条例を改正して規制を強化した。持ち込み残土を県内で出るものだけに限ったのだ。しかし、今度は周辺自治体に流れ、君津市の環境保全課・石山英樹副課長は「心苦しい」と悩む。

   藤倉教授「自治体だけの対応では限界があります。国が法律を作って全体的に規制することが急がれますね。すぐ法律ができなくても、ルールをたびたび守らない悪徳業者には公共事業に参加させない、入札させないというようなことはできるはずです」

   国谷裕子キャスター「ただ、残土処理を予算に組み込むということになれば、コストは高くなりますね」

   藤倉教授「大深度地下の工事などが多くなれば、その分建設残土も出てきます。地下を掘るのはコストがかかるということを、工事発注者は自覚することが迫られています」

   国谷「東京オリンピック・パラリンピック、リニア中央新幹線など大規模な建設工事が始まります。建設残土の問題を後回しにすることはできません」

カズキ

NHKクローズアップ現代(2014年12月9日放送「『建設残土』が家を襲う」)

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