尾野真千子に魂抜かれる柄本明...佳演怪演に唸った!悪女に共感してしまう驚くべき魔性の演出術
<松本清張 二夜連続ドラマスペシャル 第一夜 坂道の家>(テレビ朝日)

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   そもそも話は単純なのだ。実直な初老のふとん屋の親父が、店に来た若い女にひと目惚れし、営々と貯めてきた金を女に入れあげた挙句、魂を抜かれて、ついには事故を装って殺されてしまう話である。ふとん屋は寺島吉太郎(柄本明・怪演)、若い女は理容師の杉田りえ子(尾野真千子・佳演)、りえ子の初恋の人で大学准教授の川添直樹(小澤征悦)とほぼ3人だけの愛憎ばなしである。
   これに脚本(池端俊策)で加えられたのがりえ子のトラウマ。美人の母親が田舎の町で次々に男を銜え込む様子を見て育ち、ついには直樹の父親まで誑し込んだのを許せず、少女のりえ子は母親を深い穴に落して殺した過去がある。ここでさりげなく後年のりえ子の人生の闇の部分をわれわれに示す。なかなかうまい脚本だ。
   堕ちてゆく市井の男の半生は、B級2時間ドラマでも耳タコで作られているが、当作品がそれらと一線を画すのは一にも二にも監督(鶴橋康夫)の力量のなせるわざである。愛らしい尾野真千子の、ごく普通のさりげなさと、男に抱かれる時のアンニュイと、2つの顔は決して悪女らしくなく見る者に嫌悪感は抱かせない。不思議に彼女に共感してしまう驚くべき魔性の演出術だ。急な階段を上らなければ着かない家に、息を弾ませて登る吉太郎とりえ子の姿を、カメラは上から俯瞰して撮る。あたかも後に彼が墜落する奈落を階段下が象徴して見せているかのようで、なるほどと唸ったのである。(放送2014年12月6日21時~)

(黄蘭)

採点:2.5
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