<ゲームの規則 前篇>(テレビ朝日系)
永山絢斗が出色!マヌケで哀しい「特殊詐欺一家」の息子・・・金貯め込んで使わない年寄りが悪いのさ

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   親子3人を演じる役者がめっぽううまい。なかでも息子役の永山絢斗が出色だ。長いこと櫛を入れてない頭髪に無精ひげ、擦り切れて袖口がバラけそうになったスエットでグタグダしてる若い男。こんなむさくるしいヤツ、たまに近所で見かけるよねっていう感じ。

   父親役は光石研、母親役は赤間麻里子と、地味だが確実に演技力のある二人だ。そうして、結果、怖くなるくらい現実感のある詐欺ドラマになっている。

巨大団地の一室で展開する30分―瀧本智行の脚本・演出みごと

   彼らは一家ぐるみ自宅で「特殊詐欺」をやっているのである。「特殊詐欺」とは、トバシの携帯電話をいくつも使って電話をかけ、現金を私書箱に送らせる手口で相手に会わずにだまし取る詐欺の総称で、いわば「オレオレ詐欺」の進化形である。話は一家が住む郊外らしい巨大団地の古くて狭い一室だけで展開する。時間もたった30分だが、瀧本智行の脚本・演出の力はみごとだ。

   まず息子が証券会社社員を装って年配女性に電話をかける。手元には「独居老人」と記された「顧客名簿」とすべてのセリフが書かれた「台本」が開かれ、それに従って「値上がり確実、エボラ出血熱ワクチンの開発に成功しそうな製薬会社の株」を勧める。

   が、いまどきそれだけでは引っかからない。そこで声をひそめてたくみに攻めてゆく。「実は創業者一族の一人が、亡くなられたご主人に学生時代たいへんお世話になったので、ご恩返しがしたいと。ただ、ここだけの話にしていただかないとインサイダー取引に引っかかる恐れがありますが」

   で、購入することになると、今度は警察を名乗る男(もちろん父親である)が電話をして「金融取引法第197条インサイダー取引違反の疑いがある」とドスのきいた声で脅す。台本には「権威を笠に着たように」「専門用語は立て板に水の如く」との指示まで入っている。そして、被害者がおびえたところを見計らって、今度は冷静な女性弁護士(母親である)が「被害者団体を設立し、刑事問題になる前に食い止めようということになりました。弁護料200万出せますか。次に言う私書箱に現金を送ってください」とやるわけである。

   息子の言いぐさは「景気がちっとも良くならないのは年寄りが貯め込んだ金を使わないからなんだよ。オレたちは日本経済を回してやってんだよ」

   上からの受け売りだが、若い下っ端がいかにも言いそうだ。

騙し取った大金も95%はピンハネ

   詐欺をやらないまでも、自分たちが恵まれないのは年寄りのせいだと漠然と思っている若者は多いだろう。そしてそれはまったく見当違いとは言い切れないと私も思う。だが、それならばもっと声を上げたらどうだ、しらけてる余裕なんかないだろ、とも思うよ。

   なんと彼らの今月の「売り上げ」は5025万円。びっくりだが、「営業部長」と称する容赦ない取立人(木下ほうか)が来て、95%(!)を召し上げていくのである。さらに残りの5%も借金返済に充てられている。金を受け取った営業部長が置いてゆくのは新しい台本である。棚には何冊もの顧客名簿とおびただしい数の台本が並んでいる。「寄付 甲子園出場」「宝くじ当選番号」「医療費還付金」「アダルト利用料滞納」......。

   しかし、きょうはその500万円の借金が完済できたうれしい日だ。一家で喜びのスキヤキ(何年振りだろう)を食べながら、「今までは奴隷だった。これからは独立してやろうか」などと話し合っていると、訪ねてきたのは派手な若い女だ。息子にレイプされたから慰謝料をよこせと主張する。息子は酔っぱらって記憶が定かではないが、「よこさなければ警察に訴え出る、そうすれば一家で詐欺をやっていることがバレるわね」と言われると、一家そろってグウの音も出ない。

   どこまでもマヌケな親子だが、笑えない「負の連鎖」のやりきれなさがドヨーンと心に残る。後編は17日深夜から。(土曜深夜0時45分)

(カモノ・ハシ)

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