2024年 3月 28日 (木)

<薄氷の殺人>
未解明事件追う元刑事と妖しい被害者の妻・・・王道行く硬派サスペンス!ベルリン映画祭で絶賛

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(C)2014 Jiangsu Omnijoi Movie Co., Ltd. / Boneyard Entertainment China (BEC) Ltd. (Hong Kong). All rights reserved.
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   1999年、中国の華北地方で起こった猟奇的殺人では、被害者の遺体はバラバラにされ、体の断片が15か所の石炭工場で発見された。刑事ジャン(リャオ・ファン)は被害者を特定し証拠を固めて容疑者を追い詰めたが、銃撃戦でジャンは負傷し、容疑者も死んでしまい真相が明らかにならぬまま捜査は幕を閉じた。

   5年後、ジャンは刑事をやめて警備員として働いていたが、元同僚から例の事件と酷似した殺人が2件起きたことを知らされる。足を切断されていた一人は、5年前の事件の被害者の妻と親密な仲であった。ジャンは「未解明事件」の真相を再び調べ始める。脚本も書いたディナオ・イーナン監督のクライム・サスペンスは、14年のベルリン国際映画祭で金熊賞と銀熊賞を受賞した。

背筋ゾッとする冷気ただようシーン連続

   未解明事件と謎の未亡人という点が線で結ばれていく。サスペンスの王道をなぞる骨太なプロットであるが、ハリウッド映画のようなアクションシーンや「どんでん返し」は皆無で、エンタメ色は極めて薄い。演出は憎らしいほどに引き算が効いており、ハリウッド映画の逆を意識している。

   とくに、トン・ジンソンという無名のカメラマンのフィルム・ノワール的映像美がいい。全編を通して漂う冷気のような映像は、未解明事件を追う元刑事と美しすぎるが故に不幸を引き寄せてしまう未亡人との関係に、言葉ではない説得力を与えており、ヒッチコック監督の『めまい』のような美しさをまとっている。人間の欲望と業を捉え、背筋がゾッとするシーンの撮影は練りに練られており、映画における撮影の重大さを再認識させる。

   話の筋は正直に言えばサスペンスファンを唸らせるほどではない。たとえば、同じ未解明事件を扱ったポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』のように、モヤモヤすることが最大のカタルシスを与えるというものがあるわけでもない。

   映画祭で評価される理由は映画にしかできない体験を観客に与えるからに違いない。フィクションの世界に観客を誘い込むという良質なフィルムだけが持つ映画体現だろう。目眩がするほどの硬派な映画だ。

丸輪太郎

おススメ度☆☆☆☆

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