原油急落!朗報とばかり言えない「輸入大国・日本」株価下落、世界経済減速・・・

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   原油価格の下落が続いている。今月(2015年1月)20日のニューヨーク原油市場の指標原油価格(WTI)は1バレル45ドル台まで値下がりした。日本をはじめとする消費国には朗報だが、一方で世界経済の新たなリスクになりつつある。

   原油が全輸出額の9割を占める南米ベネズエラは、経済が悪化するとの見通しから、世界一価値の低い通貨といわれるボリバルの実質価値がさらに半分になっている。アメリカの大手格付会社「ムーディーズ」はベネズエラ国債を2段階引き下げて、下から3番目のCaa3にすると発表した。輸入に頼ってきた食料品など生活必需品が手に入らず深刻なモノ不足に陥り、連日スーパーの前に長蛇の列ができ、客は「5日も並んでいるのに牛乳が買えないのよ」と悲鳴をあげる。

   原油が輸出の7割を占めるロシアも同様だ。通貨のルーブルが大幅に下落し、昨年12月半ばには1ドル80ルーブル台にまで落ち込んだ。負の連鎖はロシアと結びつきの強い欧州にも波及している。先行き不透明感から5日には株価が急落、ニューヨーク市場や翌日の東京株式市場にも飛び火し、一時、世界同時株安の様相を呈した。

   エネルギー問題と金融市場が専門の和光大学の岩間剛一教授は「中国や欧州経済の減速、アメリカのシェールオイルの生産量増加など構造的な問題はあったが、これだけ急速に下落するとは誰も予測できなかった」という。

OPEC「価格下がっても減産せず」米国シェールオイル採算割れに追い込む戦略

   急激な下落の原因は昨年11月のOPEC総会にある。背景にあるのはオイルシェールを中心にしたアメリカの原油生産量の急速な増加だ。「米国はこのままいけば、今年、世界最大の原油生産国になります。そうなると、OPEC(石油輸出国機構)を中心に動いていた国際資源外交がまるっきり変わってしまいます」(岩間教授)

   危機感を覚えた世界最大の原油産出国のサウジアラビアは、OPEC総会で減産先送りを主導した。生産コストの高いシェールオイルを採算割れに追い込もうという戦略だ。ヌアイミ石油鉱物資源相は地元紙に「原油価格が1バレル20ドルに下がっても減産はしない」と語っている。

   サウジなど中東油田の生産コストが1バレル10~25ドルなのに対し、アメリカのシェールオイルは地下数千メートルまで掘り岩盤のオイルを吸い上げるため1バレル50~100ドルと割高だ。今回の原油価格の下落でアメリカのシェールオイル開発会社に採算割れで経営破たんしたところが出たほか、計画の見直しがを進めているところが多い。

   原油市場はどうなるのか。エネルギー問題の世界的権威、ダニエル・ヤーギン氏は「価格決定者がいない時代に入ったと言えます。この状況が続けば原油価格はもっと乱高下し、不確実な時代になったということです」と指摘している。

   輸入原油に頼る日本は朗報と喜んでいていいのか。岩間教授は「原油価格が安いといって満足するのはよくない。再生可能エネルギーやメタンハイドレードの開発など多様化を図るべきです」と、かつてのオイルショックなどすっかり忘れてしまった政府や石油業界に警鐘を鳴らす。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2015年1月21日放送「原油安ショック~世界に広がる混乱~」)

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