「ふるさと納税」特典競争が過熱!自治体収支マイナスの本末転倒

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   北海道中部の上士幌町は人口5000人の酪農の町だ。年間の税収は約7億円だが、このところ税収を上回る寄付が集まっている。去年4月(2014年)からで8億4000万円で、町は「人口が倍になったような」という。「ふるさと納税」の寄付である。

   制度の導入は2年前だった。寄付のお礼に地元特産の「霜降り和牛」を用意した。「このあたりは半返しが習慣なので」と、寄付額の半分を返す気前のよさが話題になって、雑誌の取材が相次いだ。いま入金が1000万円を超える日が続く。

   寄付金は子育て支援・少子化対策に当てられる。スクールバスを750万円で発注し、図書館には「夢基金」と名付けた60万円分のDVDが揃う。 今後、幼稚園の無料化や早期の英語教育も計画している。

寄付上回る居住住民の税金控除

   2008年に導入された「ふるさと納税」は地方と都市部の格差是正が目的だ。生まれ故郷はもちろんだが、応援したい自治体・政策に寄付をすると、一定の条件で居住地で税金が控除される。全国の6割の自治体が参加しており、昨年度の寄付額は130億円にもなった。政府はさらなる規模拡大を決めた。

   取り組みを検索できるポータルサイトも登場して、政策内容や特典(お礼)の詳細を見ることができる。肉、魚、野菜、酒、麺類などに分類され、写真がずらりと並んでさながら通信販売サイトだ。高額商品の競争も過熱して思わぬ事態も起っている。

   静岡・富士市は「特典には節度が必要」とお礼の金額を3割に抑えていた。正論である。ところが昨年、送られてきた寄付金は約100万円なのに対して、富士市民が他の自治体に寄付した税金の控除額が約309万円と200万円の赤字になった。住民サービスは逆に低下し、市議会は特典の見直しを検討中だ。

   中央と地方の調整のはずが、地方同士の競争でおかしなことになった。東京大の宇野重規教授は「消費者主義と地方同士の競争は制度の本来からははずれます。一方で税収を上回る寄付が集まるところもあり、政策への関心も高まる。コインの裏表みたいなものです」という。

特典よりも『ふるさと』と長いお付き合い

   特典に頼らず実績をあげる自治体もある。人口3万4000人の埼玉・宮代町は首都圏のベッドタウンだが、町内の「ヤマ」と呼ぶ雑木林で親子が遊んでいる。荒れ果てて人が入れなかった山林を2年前に市民の憩いの場に整備した。資金は「ふるさと納税」だ。500万円が必要だった。ホームページで「子どもも大人も一緒に楽しめる場所を一緒に作ろう」と呼びかけ、運用や利用方法、将来ビジョンを示した。

   応じた伊藤晴子さん(東京・港区)は宮代町とは縁もゆかりもない。幼い頃を過ごした田舎では当たり前だった自然がほしいと思った。同じ思いの人はいた。2か月で775人が賛同し900万円が集まった。

   北海道・東川町(人口8000人)は平成の大合併に乗らず、単独での存続を選んだ。地方交付税交付金は減り人口も増えない。そこで立てた計画がブドウ栽培とワインづくり、オリンピック選手の育成、森づくりの3つだ。どれも時間がかかる。

   森づくりに寄付した鹿児島・指宿の橋口俊一・千末さん夫妻に、町から「森を見に来ませんか」と誘いがきた。1人2万円の航空運賃の補助と宿泊施設を格安 で、とあった。夫妻は以来、毎年訪問している。「行くたびに木が育ってるんです。一生寄付すると思う」と千末さんは満足そうだ。同様の寄付者がいま3000人いる。

   宇野教授は「現代的な現象ですね。大都市にはふるさとのない人も多い。そこを もう1回選び直して夢を託す。政策に参加することで民主主義を再確認するきっかけになります」という。これが制度の趣旨だ。

   たとえ初めは特典目当てだろうと、「どんなものが?」という好奇心は貴重だ。その中から地方の夢を探り出す人が現に出ている。宇野教授は「政治は地方から変わる」といっていた。いい言葉だと思う。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2013年1月26日放送「ふるさと納税 ブームが問うものは」)

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