増え続ける「無戸籍」出生届出しにくい民法、支援に消極的な自治体窓口・・・だれにも相談できず孤立

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   無戸籍の4歳の女の子。戸籍のないことがどういうことかわからず屈託のない笑顔がはじける。こうした子どもたちが学校へ上がることも、住む場所、仕事にも支障の出る無戸籍のままにしておいていいのか。「クローズアップ現代」は昨年5月21日(2014年)、出生届が出されないまま32年間ひっそりと社会の片隅で暮らさざるを得なかった女性を取り上げ、反響を呼んだ。

   国も実態調査に乗り出し、無戸籍者は分かっただけでも533人にのぼり、うち84人は成人だった。しかし、これは氷山の一角と考えられる。調査に回答した自治体はわずか16%に過ぎないからだ。実態を把握していないために回答することができなかったのだろう。自治体も知らない無戸籍者が数多くいることを逆に浮かび上がらせる形になった。

本当の名前も年齢もわからない...

   無戸籍は親子関係を決める民法の規定が原因の一つといわれる。とくに解決が難しいのは、妻が夫の暴力から逃れ、数年、時には数十年にわたって離婚すらできないケースだ。妻が新たなパートナーとの間に子どもを授かっても、出生届を出せば法的には暴力に苦しめられた夫の子どもになってしまう。このため届出をためらうケースが多いという。

   関東地方に住む32歳の女性は、前回の放送で「ショックを受けた」と話す。「自分と同じ境遇の人がいて、しかも同じ年。すごくびっくりし見ているのが辛かったけど、もしかして自分も名乗りをあげれば聞いてくれる人がいるのではないかとおもったんです」

   女性の母親も夫からひどい暴力を受け、命からがら逃げた。その後、支えてくれた男性との間に生まれたのがこの女性だった。母親は直ぐに裁判所で戸籍を取る手続きを行おうとしたが、自分の子どもではないという夫の証言が必要と分かり、出生届をあきらめた。

   戸籍がなくても学校へ通うことはできるのだが、両親はそのことを知らなかったため、女性は学校へ通うことはなく、市販の教材で一人で勉強するしかなかった。

   本当の名前も年齢も分からないという男性は、母親は出生届を出さないまま出奔した。知人の女性に育てられたが、その女性とも連絡が取れなくなった。身元の証明が求められない飲食店を転々としながら働いてきたが、無戸籍のまま生きていくには不安が大きいと自治体を訪れた。

   しかし、担当者は裁判所に行くよう告げただけで、相談に乗ってはもらえなかった。裁判所で戸籍を作るには就籍という手続きがあることを知ったが、それには日本で生まれ育った証拠が必要であることを知らされた。自分のルーツはどこにあるのか。生まれ育った大阪を訪れたが、子どものころとは様変わりしてしまっていて戸惑うばかりだった。唯一見つけたのは幼児のころに遊んだ記憶がある公園だけだった。「証拠が見つからないのは悲しい。これで納得してもらわなければ、逆に何を出せばいいのか問い返したい」と訴える。

戸籍なくても乳幼児健診、予防接種、小・中学校通学、健康保険

   国谷裕子キャスター「孤立無援の状況に置かれていて、社会もそういう人たちの存在に気づかない。なぜこれほど見えにくくなっているのでしょうか」

   作家の天童荒太はこう話す。「出生届ができなかった親御さんの後ろめたさ、子どもも気づいた時には届けなかったことで罰せられるのではないかという恐れなどで声をあげることができないのでしょう。法改正は重要だけど、戸籍はなくてもとりあえずは乳幼児健診、予防接種、小・中学校通学、健康保険は受けられるんです。そうしたことを支援するように国は自治体に通知しているのだから、すべての自治体で周知徹底されないといけない。自治体の窓口では、相談にみえた無戸籍の人に一言『大変だったね』『大丈夫だよ』とねぎらいの言葉をかけてほしいですね」

   子どもに罪はないはずなのだが、戸籍のない子どもには住民票もなく、いずれは住む場所や仕事が限られ、医療などの行政サービスも受けられない。現実離れした民法をそのままにしておけば、離婚や夫の暴力が増える中で、無戸籍の子どもは増えるばかりだ。

モンブラン

*NHKクローズアップ現代(2015年2月18日放送「戸籍のない子どもたちⅡ どうしたら救えるのか」)

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