<美の壺セレクション>(NHK Eテレ)
漬物は芸術だあ!全国に600種類「暮らしと文化の凝縮」これがなければ日本の朝は始まらない

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   「暮らしの中に隠れたさまざまな美を紹介する新感覚の美術番組です」というのがうたい文句で、取り上げたテーマは「和食の名脇役 漬け物」。工芸品のような飴細工や和菓子なら美術番組で取り上げても「なるほど」となるけれど、漬け物で果たして大丈夫なのか。

   番組は草刈正雄の小芝居でスタートする。豆カレーを作って「おれってマメな男」とダジャレをかましたはいいが、福神漬けがないことに気が付いた。途方にくれ、天に向かって「はやく福神漬けを返してえ!」と叫ぶあたりは、良い意味で馬鹿馬鹿しい。

茶懐石の板前さん「漬物を食べて食事が完成する」

   ようやく始まった本編では、まずは俳優の紺野美沙子が愛用の糠床から取り出したきゅうりの浅漬けが登場した。緑にピカピカと光っている。ぬかに含まれる油でつややかに光るのだそうだ。いきなりひとつ賢くなった。加えて、お気に入りのお釜で炊いたご飯に乗せるのが最高の贅沢って、この魅力にあらがえる日本人っているんでしょうか。

   紹介される漬け物のバリエーションゆたかなこと! なんでも、日本各地で作られる漬け物は600種類にも及ぶらしい。茶懐石の料亭の板前さんの一言「これ(漬け物)を食べて食事が完成する」も味わい深い。

   漬物は郷土色も極めて豊かである。滋賀県日野町の「日の菜漬」は美しい色で評判だ。漬ける前の日の菜は白い根に濃緑の葉を付けている。これを皮つきのまま根も葉も一緒に塩もみにして酢漬けにすると、根に含まれるアントシアニンが酢と反応して、紫がかったうすピンクになる。漬け上がった日の菜漬を塩漬けしたカブの葉できゅっと巻きあげれば、食卓に咲くバラになる。

飴色に漬かった野沢菜のおいしそうなこと・・・もう、たまらん

   長野名物の野沢菜漬けにも地元ならではの楽しみ方がある。われわれが普段食べているのは漬け始めてから2週間前後の「浅漬け」で緑色だ。ところが、漬けて2か月もすると飴色に変わる。発酵して出る色と酸味のある味は冬の1月にだけ楽しめる。地元女性のお茶会も、野沢菜の葉脈から酢飯の白が透ける巻きずし、野沢菜の佃煮、刻み野沢菜をたっぷり乗せたお茶漬け・・・。「この佃煮なに入ってんの?」「ほししいたけ」「しいたけか」というやりとりに、当たり前に「我が家の味」がある。

   30分番組だけれど、見終る頃には眼福でいっぱい。小芝居、インタビュー、ドキュメンタリ要素、枠いっぱいに詰め込まれた漬け物をめぐるエトセトラは、人に話したくなる「綺麗」だらけの30分だった。朝ごはんが待ち遠しいっ。(2月22日深夜11時再放送)

ばんぶぅ

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