<博士と彼女のセオリー>
ホーキング博士と妻「求めすぎない愛」難病の進行でも衰えぬ探究心・・・二人は乗り越えることができたのか

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   難病に襲われた若き天才と献身的にそれを支える妻が、惹かれあい、愛し合い、ときに反発して決別すら覚悟し、けれどともに苦難を乗り越える。そんなヒューマンドラマを想像していたのだけれど、良い意味で裏切られました。ある男女の、「貴方を愛しています」から「貴方を愛しました」までの情と思いやりの映画だった。

エディ・レッドメイン全身で演じた「変わり者で素直で無邪気で愛おしい」

   物語のモデルは物理学者のスティーヴン・ホーキング博士とその妻・ジェーンで、若かりし日の二人のケンブリッジ大学での出会いから映画はスタートする。くしゃくしゃ頭に薄汚れた黒縁眼鏡で、まさに「理系男子」なエディ・レッドメインがすこぶるチャーミングで、一気にホーキング博士が好きになる。

(c)UNIVERSAL PICTURES
(c)UNIVERSAL PICTURES

   妻・ジェーンを演じるフェリシティ・ジョーンズはいかにも強く美しい高学歴女子なのだけれど、クラシカルなドレスが似合いすぎで、いきなりビジュアル面から期待が持てる。

   今年度のアカデミー賞主演男優賞を受賞したレッドメインが、ALSに侵されていく絶望とそれでも失われない研究への情熱を全身で演じている。強く気高いだけではない。苛立ったり、悲しかったりもする。自分を揶揄する毒の効いたユーモアをまじえることもある。変わり者で、素直で、無邪気で、愛おしい。病気になる前も後も変わらずに「自分でいる」ことの難しさ。それを可能にした博士の内面の強さが瞳から伝わってくる。

   一方で、不自然にしゃっちょこばった腕や痩せ細った足、首などの角度、身体的機能の衰退も、鬼気迫るリアリティーで再現するのだからすごい。ままならない身体と向き合うべき命題への気迫が、物語の中盤を厚く支える。

愛情は「愛」と「情」が1対1でなくても、足して2ならばそれでいい・・・

   しかし、疲労感は確実に生活を襲う。幼子をかかえ、子供よりも目の離せない要介護者の夫をかかえ、ジェーンはいつしか支えを必要とするようになる。そんな折、ジェーンに前に現れたのが近所の聖歌隊の指揮者のジョナサンだった。妻に先立たれたジョナサンはホーキング一家の手伝いをかって出る。

   とはいえ、待っているのはありがちな不倫劇ではない。惹かれあったことは事実だけれど、すべてではない。気持ちは他の男性にある。けれど夫へのより濃い情が彼女を抑制する。大切な相手を思いやり、互いに何かを隠し、気付かないふりをしあうことを打算とは呼べないだろう。愛よりももっと濃密な情。愛情は愛と情が1対1でなくとも良い。足して2になるのなら、それが二人にとっての愛情の形なのだ。

   だからこそ二人が選んだ道に私たちは祝福と敬愛のまなざしを向ける。おじいさんとおばあさんはいつもいつまでも仲良く暮らしましたとはいかない。でも、メロドラマのように互いを傷つけ、返り血で結ばれるような結末でもない。「戦友」ふたりの関係性が凝縮されたラストシーンは圧巻である。ああ、でもやっぱりやるせない。

   個人的な見どころは、ホーキング博士の大学時代からの悪友を演じたハリー・ロイドが格好良すぎたことでした。

(ばんふう)

おススメ度☆☆☆☆

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