月給1万2000円アップで歯止めかかるか「介護職員の離職」それでも低すぎる賃金

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   介護保険制度が改定され、4月(2015年)から順次新たな制度に移行する。背景には10年後の2025年に団塊世代がすべて75歳以上になり、介護が必要な高齢者が急増するという見通しがある。

   介護職員は重労働の割に賃金が安いため、なり手がいなかったり離職者が多く万年人材不足だ。今回の改定では月額1万2000円アップされるが、不足解消につながるのか。一方で介護サービスの対価として事業所に支払われる介護報酬は引き下げられるため、事業所の苦境は変わらない。

10年後には最低でも30万人不足

   介護職員の不足は都市部ほど深刻だ。東京都では、職員不足のために計画通り人員の配置ができない特別養護老人ホームが47.5%に達しており、サービスの休止や事業所の閉鎖に追い込まれる事態まで起きている。人員不足は夜勤や泊りなどの不規則な勤務体制で、肉体的、精神的にきつい仕事の割には給料が低く、人材が定着しにくいことがある。厚生労働省の調査によると、平均年収は全産業に比べ100万円も下回っている。

   この状況を打開するため、国は4月から介護職員の給料を月額でプラス1万2000円の処遇改善を行い、10年で介護職員を215万人に増やすことにしている。ところが、団塊の世代がすべて75歳以上になる10年後には、今回の国の対策が順調に行われたとしても介護職員はあと30万人が必要だとされている。

   厳しい人手不足のなかで、勤務体制や待遇を見直しして人材確保を実現している施設もある。東京・町田市の社会福祉法人「合掌苑」が運営する介護施設には430人の介護職員が働いている。かつては正職員の離職率が20%を超えたこともあった。日勤と夜勤を掛け持ちするシフトがきつく、「15人採用しても1年後には3分の2以上が辞めてしまった年があった」(森一茂理事長)という。

   職場環境を改善しようと2年前から夜勤専門のシフトを設けた。16時間と長かった夜勤を9時間勤務にして週3~4日間担当してもらうことにした。それでも月収は40万円を確保できた。

介護報酬2.2%引き下げで事業所は苦境

   兵庫県尼崎市の社会福祉法人では、介護職員を対象に独自のキャリアアップ制度で待遇改善を進めている。ケアマイスタ―制度と呼ばれるこの制度は、技術力や指導力によって無資格から最上位のマイスターまで6段階に分け、年1回の資格試験に合格すれば給料が上がる仕組みだ。

   たとえば、最上位から3番目のゴールドの試験に合格すると、基本給プラス手当で1万5000円アップ。最高ランクのマイスターなら3万円アップし、年収が600万円に達している職員もいる。

   ところが、今回の制度改正では、待遇改善の努力の腰を折るような改正も抱き合わせで導入される。事業所の介護報酬が全体で2.2%引き下げられるのだ。介護職員の給料は増えても、事業所の経営はますます苦しくなるという構図だ。ケアマネージャーとして豊富な体験を持つ淑徳大学の結城康博教授は、「9年ぶりに事業所全体の介護報酬がマイナス改定になったことで、一生懸命やっているところに水を差すような影響が出てくるのではないかと心配しています」と話す。待遇改善を進めているところはまだわずかで、全体的には大変な仕事に変わりはないし、人手不足は解消していない。他産業でも人材が欲しい中で、1万2000円アップで離職が食い止められるのかどうか。確たる見通しはないようだ。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2015年4月1日放送「介護職の働き方改革~人材確保の最前線~」)

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