JR福知山線事故10年―遺族と加害企業が続けた異例の対話「責任追及より息子はなぜ死んだのか知りたい」
2015.04.22 17:51
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スピードアップ「速達化」には邪魔だったATS整備
検証は組織の問題にも踏み込んだ。着目したのはATS(自動列車停止装置)。浮かび上がってきたのは、社内の相反する2つの動きだった。福知山線ではダイヤ改正のたびに所要時間を短縮する「速達化」が繰り返された。一方でATSについては整備を遅らせる判断が繰り返された。木下さんは「普通ですと、安全対策ができてからスピードアップするものでしょう。組織的に連携されてないのが明らかになった」
対話の成果が2冊の報告書にまとめられた。その中でJR西は「巨大なシステムを動かす際の相互の連携がかけていた」と組織の問題を認めるに至った。木下さんは「やっとなんとなく直接原因、間接原因もわかってきたかなという思いです」と語る。
大規模事故を長年研究してきた作家の柳田邦男さん「これまでの原因究明は責任追及が重視されました。すると、組織は自己防衛に走ってしまう。ところが今回は責任追及を横に置くことで合意した。今回の取り組みはとても重要な前例になると思いますね」
こうしたことが行われるためには企業側の真摯な経営姿勢や安全対策、事故への反省が欠かせないが、日本の企業に期待できるだろうか。原発事故や再稼働問題への対応を見ると、大きい企業ほどダメだと分かる。
ビレッジマン
*NHKクローズアップ現代(2015年4月20日放送「いのちをめぐる対話~遺族とJR西日本の10年~」)