2024年 3月 29日 (金)

<龍三と七人の子分たち>
オレオレ詐欺のガキども叩き潰せ!落ちぶれヤクザの親分子分が再結集―北野武のブラックな笑い爆発

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(C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会
(C)2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

   元ヤクザの組長の龍三(藤竜也)は、息子・龍平(勝村政信)に煙たがられながらの隠居生活を送っていたが、あるときオレオレ詐欺に引っ掛かってしまう。義理と人情を重んじる龍三にとって、人々を騙して金をせしめるやり口は到底許すことができない。昔の仲間や組長たちを集めて「一龍会」を結成し、暴走族上がりの詐欺集団を懲らしめてやろうと立ち上がったのだが・・・

中尾彬の寸借詐欺師―セコさ抱腹絶倒

   北野武の3年ぶりとなる新作は、前作「アウトレイジビヨンド」とは打って変わってコメディ色全開の内容だ。龍三や生活保護を受けながら食い繋いでいるマサ、せこい寸借詐欺を続けているモキチなど、引退したヤクザたちは滑稽で哀愁が漂う。

   主演の藤竜也らベテラン俳優たちの演技はもちろんいい。元ヤクザ8人のキャラクター設定も、ガンマンがいたり元特攻志願兵がいたりとバラエティに富み、なかでもモキチ演じる中尾彬は北野武の悪意ある笑いを誘う。今後、中尾のシリアスな演技を見ても、思い出して吹いてしまうのではないかと心配になるほどだ。

   しかし、いかんせんプロットが弱い。元ヤクザがオレオレ詐欺に引っ掛かり、ジジイたちが組を結成するという序盤のくだりは非常にワクワクさせられたが、その後はエピソードの羅列に過ぎない。とくに気になったのは、詐欺集団がステレオタイプ過ぎて、悪役としてあまり機能していないということだ。「現代の悪」としての立ち位置を印象付けていれば、さらにジジイたちの哀愁は際立ち、傑作になりえたかもしれない。

   北野武のブラックでシンプルな笑いは詰まっているので、何も考えずにゲラゲラ笑う映画としてはありだ。

野崎芳史

おススメ度☆☆☆

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