イルカショーだけじゃない!飼育して見せるだけでいいのか?動物園・水族館「閉鎖」の危機

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   追い込み漁で捕獲した野生のイルカをショーに使って客寄せするのは倫理に反する。海外からこう批判され、水族館が岐路に立たされている。日本動物園水族館協会(JAZA)が追い込み漁で捕獲したイルカを入手しない道を選択したためだ。

   今後、飼育やイルカショーなどの展示を続けるには、自ら繁殖する方法が求められるが、知識、経験不足のうえ、多くの資金がかかる。いち早く繁殖に取り組んできた動物園も、血統の片寄りが生まれるなど順調ではない。イルカ問題は、野生の生き物を飼育、展示する水族館、動物園本来のあるべき姿とは何なのかに一石を投じることになった。

オーストラリア、ニュージーランドでは見世物中止

   水族館で行われるイルカショー。調教師の手さばき一つで宙返りしたり忠実に頷いて見せたり、その賢さには感嘆するが、狭い水槽で身をよじって芸を行う姿を見ていると哀れさもわいてくる。野生のイルカが客に楽しんでもらおうと喜んで芸を見せているのかどうか。

   世界ではイルカショーなどの展示をやめる動きが広がっている。オーストラリアのシドニー水族館はイルカを閉じ込めるべきではないと公開をやめた。ニュージーランドの水族館も1年前にイルカの展示やショーを中止し、その後閉館した。

   ただ、イルカなどの生き物が見られなくなることには反論がある。新潟市の水族館「マリンピア日本海」の加藤治彦館長は、「動物園や水族館で生き物を見るチャンスがなくなってしまうと、本当の意味で自然や野生生物を理解したことにならないと思います。その場所がなくなるということは恐ろしい。不安も感じます」と話す。

   マリンピア日本海はイルカショーに厳しい目が向けられるなかで、単なる見世物ではなく、イルカの生態などを説明して生き物をより身近に感じるショーに転換している。

   では、追い込み漁で捕獲したイルカの入手ができなくなった水族館は今後どうするのか。国谷裕子キャスターが「繁殖のハードルがあるなかで水族館の危機感をどう見ていますか」と、富山市ファミリーパークの山本茂行園長に聞く。

「かなり深刻だと思いますね。やはり集客力を持った動物ですし、ショーという表示の仕方も定着している。イバラの道になると思います。(繁殖に向けた体制として)個々の水族館のイルカの飼育という単位ではなく、日本で飼育しているイルカ全体を一つの群れとして、その遺伝的な繋がりや性別を見ながら10年、20年、30年先の繁殖計画を立てることが第一でしょう」

見物客にも求められる意識改革

   イルカの繁殖への努力が遅れてしまった原因について、山本園長は「追い込み漁に頼ってきたことで出てきている問題だと思います。野生動物を飼育するスタンスとして、水産資源だろうとコウノトリなど貴重種だろうと、彼らは生の営みをそこでしてきた。それを飼育界に取り込んだ場合は、生の営みを人が代わって保障してあげる。これが基本的なスタンスと思います」という。

   生の営みを保障するとは繁殖を助け、親から子へと命を繋げることだが、山本園長は「飼育する側はそれが動物に対する倫理であり福祉だという考え方をもたなければいけない。今、そこへ大きくカジを切って行くターニングポイントを迎えており、イバラの道を突き進んでいくしかないですね」と指摘する。

   それは水族館や動物園に行って楽しむ側も同様に共有すべき考え方だろう。水族館はイルカショーお手軽に楽しませてくれる存在では済まなくなっている。

モンブラン

NHKクローズアップ現代(2015年6月10日放送「水族館からイルカが消える!?~国際批判に揺れる現場~」)

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