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北海道砂川「一家5人飲酒暴走殺傷」責任ないか!?飲ませた店、見ぬふりで通報しなかった周囲

   事故は今月6日(2015年6月)の午後10時半すぎに起った。北海道砂川市の新聞配達員永桶弘一さん(44)一家の軽ワゴンが青信号で交差点に入ったところへ、谷越隆司容疑者(27)=危険運転致死傷容疑で逮捕=の乗用車が赤信号を無視して100キロ超の猛スピードで突っ込んできた。軽ワゴンは50メートルも吹っ飛んだ。

   谷越とほぼ並走していた古味竜一容疑者(26)=ひき逃げ容疑で逮捕=の乗用車は、衝突で路上に投げ出された永桶さんの長男を1.5キロも引きずって逃げた。

   弘一さんと妻文恵さん(44)、高3の長女恵さん(17)、高1の長男昇太さん(16)が死亡し、次女光さん(12)はいまも重体だ。平和な仲のよい家庭が一瞬にして消えた。

   事故を起こした2人は夜ごと砂川市の繁華街に乗り付け、飲酒して暴走を繰り返していた。飲食店も周囲もみな知っていたが、だれも止める者はいなかった。飲食店組合会長の前田秀紀さんはかつてハシ袋に「ダメ!飲酒運転」と書いて加盟50店に配ったことがある。ところが、客から苦情が出てやめになった。

   愛媛大の小佐井良太准教授は、この事故を「状況や環境が生んだ」という。だれも止めない、警察も知らない、道路に監視カメラもない、通報もしない―課題が凝縮しているという。

福岡の居酒屋チェーンでは誓約書「運転しない」書かないと酒出さない

   大きな事故が起るたびに罰則は強化されてきた。平成11年に東名高速で飲酒運トラックの追突で子ども2人が死亡し、危険運転致死傷罪(最高15年の懲役、現在は20年)ができた。18年には福岡で飲酒運転車の追突で子ども3人が死亡し、翌年の道交法改正で酒を提供した者、同乗者にも最高3年の刑ができた。 3年前の京都・亀岡市の事故ではで小学生ら3人が死亡し、無免許への罰則が強化 された。それでも事故はなくならない。

   福岡の居酒屋チェーンは6年前から酒を注文した客に「飲酒運転はしない」という誓約書を書かせる。飲んだ後どう帰るのかまで店員が確認する。署名しないと酒は出さない。当初こそ抵抗があったが、いまでは客の方が「書いた方がいい。自覚もできるし」という。

   行政も動いた。福岡県は3年前に飲酒運転撲滅条例を作った。警察がまず飲食店に指導・助言をし、悪質な場合は違反金を課す。罰則は全国で唯一だが、指導・助言に店側は応じ、違反金はゼロだ。この2つ、どちらも平成18年の事故から出た地域ぐるみの取り組みの成果である。

京都府警「特命取締係」運転者が酒飲んでる!市民の通報で出動

   京都府では市民と警察の連携が進む。平成24年に相次いだ悲惨な事故を機に、府警は特命取締係をつくって、6人が専従で無謀運転根絶を目指す。カギは市民からの通報だ。「車で来ている人が飲んでる」と連絡があると係が出動する。

   ある晩、通報で車を止めてみたら、70代の男性で、飲酒運転の常習のほか、50年間も無免許だったことがわかった。これまでに通報による悪質検挙は101件。年間100人近かった死亡者が3割以上減った。府警は「悪質違反・危険運転を限りなくゼロにしてやる」と言い切る。

   小佐井准教授は「意識が変わってきた」という。警察はこれまで「ゼロ」とはいわなかった。また、通報には勇気がいるものだ。それが結果に出た。亀岡市では600日以上も死亡事故が起っていない。

   むろんまだ手はあるだろう。道路の造りをかえてスピードを出しにくくするとか、監視機器とか。車が勝手に止まるという装置もある。まずは長距離トラックとスポーツタイプから装着してほしいものだ。

ヤンヤン

NHKクローズアップ現代(2015年6月25日放送「なぜ暴走は止められなかったのか~検証・一家5人死傷事故~」)