<天皇の料理番>(TBS系)
あと2回とは惜しい!これぞTBSドラマという見応え・・・感動押し付けない抑えた演出の見事

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   大正・昭和時代の宮内省厨司長、いわゆる「天皇の料理番」を務めた秋山徳蔵氏の人生を描いた直木賞作家・杉森久英原作のドラマだ。なお、ドラマでは主人公の名前は秋山「篤蔵」となっている。

   NHKの朝ドラもしくは大河ドラマのようなスケールで、オープニングテーマの「威風堂々」が心地よく響く。3か月で終わるのが惜しいほどの大作である。データニュース社が行うドラマ満足度調査でダントツ1位になったのもうなずける。

鈴木亮平の役者魂、黒木華の健気さ素晴らしい

   福井で生まれ育ち、何をやっても長続きせず厄介者に思われていた青年、秋山篤蔵(佐藤健)は、ふとしたきっかけで食べたカツレツに感動し、妻の俊子(黒木華)を残して日本一のコックを目指して上京する。華族會舘(旧鹿鳴館)での下働きから腕を磨き、認められるも、職場でケンカをしてクビになり、街の大衆食堂に移る。そこでもいろいろあったあげく、料理修業のためにパリへ渡る。言葉や習慣の違い、人種差別に苦しめられながら、名門オテル・リッツのシェフとなり、ついには日本政府から天皇の料理番として呼び戻され、そこへ関東大震災が来てと、史実に裏打ちされたストーリーが濃密で展開が早く、目が離せない。

   主演の佐藤健はちょっと美形すぎると思わないでもないが、ひたすら料理を愛する一生懸命な篤蔵を好演している。料理学校でトレーニングを受けたという野菜の皮むきや千切りも熟練シェフのように見事である。子供ができてからの付け髭はコントっぽくて笑っちゃうけど・・・。

   とにかく、篤蔵の兄、周太郎役の鈴木亮平が良かった。篤蔵の良き理解者で、叱咤激励し弟を温かく見守っているのだが、結核に侵されてしまう。出番は少ないが、出るたびにどんどん頬がこけていき、最後は本当に死んじゃったんじゃないかと思わせるほどの痩せっぷりだった。鈴木は役作りのために半年で20キロ減量したそうだ。これぞ役者魂。

   妻役の黒木華も素晴らしい。篤蔵を慕い、献身的に支える妻の役で、昭和顔の本領発揮とばかりに、奥ゆかしさと強さをバランス良く見せてくれる。こちらも病気になってしまうのだが、病床からか細い声で「ジュテームって、なんですか?」と尋ねる姿が本当にかわいらしい。

静かに泣く家族、感傷的な音楽なし・・・おおげさに描かないシーンにリアリティ

   TBS60周年記念ということで、配役、演出ともに力が入っている。毎回出てくる料理や、当時の丸の内やパリの街並みも見ごたえがある。なのに、その手のドラマが陥りがちな、重厚長大で感動のゴリ押し一辺倒の演出になってないところがいい。

   たとえば、パリへの渡航費用を周太郎からもらう場面。周太郎は弟と一緒に父・周蔵(杉本哲太)に頭を下げてお金を作ったのだが、これをあえてドラマで再現せずに、母・ふき(美保純)の淡々とした台詞だけで伝える。篤蔵の背中に向かって「あんたは幸せな子やねぇ。幸せな分だけ余計励まんといかんね」

   もう一つ、その周太郎が亡くなる場面。「スッポンのコンソメ、ザリガニのポタージュ・・・」と篤蔵が指揮した大正天皇御即位の礼の大饗メニューを読み上げる母、周太郎はそれを聞いて「うまそうだなあ」と安心したように息を引き取る。わっと号泣もしない。感傷的な音楽も流さない。静かに泣く家族だけがそこにいる。泣けるような場面だからこその抑えた演出。それがとてもリアルで胸にしみるのだ。

   パリから帰国後の話の流れが、さすがに駆け足気味になってしまった点が惜しい。本当は全体を半年ぐらいかけてやるドラマだろう。関東大震災の炊き出しを経験し、戦中戦後の食糧難の時期を篤蔵がどう乗り越えるのか、あと2回の放送を大事に見たい。(日曜よる9時)

                                

(カモノ・ハシ)

文   カモノ・ハシ
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