『国連』創設70年~大国の対立、難民急増、テロ標的にされるPKO・・・対応しきれず機能不全

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   創設から70年を迎えた国際連合はかつてない危機感に瀕している。シリアの内戦に端を発する欧州への難民問題、各国で展開中のPKO活動、アメリカやロシアなど大国の利害が対立などで機能不全に陥っているのだ。今後、国連はどういう方向に向かうべきか。 国谷裕子キャスターが国連副事務総長で、平和・安全保障分野のエキスパートでもあるヤン・エリアソン氏(元スウェーデン外相)に聞いた。

PKO部隊126人が活動中に死亡

   国谷「シリア問題について、国連はなぜ適切な対応を取れなかったのでしょうか」

   ヤン「失敗であることを認めざるを得ません。事態打開のためには安全保障理事会が結束して取り組む必要がありますが、それができていない。去年(2014年)のウクライナ危機以降、ロシアと欧米が緊張状態にあることが団結をさらに難しくさせています」

   国谷「国連安保理の存在意義に立ち返ると、常任理事国は自国の利益ではなく、世界の利益を最優先に考えねばなりませんが、機能不全に陥っています。どうにかして結束する方法はないのでしょうか」

   ヤン「私も国連が何もできないことにいら立ちを感じています。安保理の常任理事国はとてつもなく大きな責任があると同時に、大変な栄誉もあるので、『非人道的な残虐行為がある場合は、拒否権の発動を減らすべき』というフランスが提案は大きな一歩だと思います」

   目の前の紛争に適切に対処できないと批判されてきた国連が、紛争解決の手段として模索してきたのがPKO(平和維持活動)だ。初めて発動されたのは1948年のパレスチナだった。建国間もないイスラエルとアラブ諸国の間に立って「停戦」を監視するのがその任務で、一応の停戦合意が成立していたため、このときはたしかに「平和維持」と言えた。しかし、その後、PKOは国際社会の求めに応じて活動内容を変化させてきている。

   問題になっているのは、維持すべき「平和」もないような地域でもPKO部隊が活動せざるを得ない状態になっていることだ。たとえば、1万3000人の部隊員が派遣されている南スーダン。武装集団との合意がないまま派遣されたため、PKOそのものも標的となっている。

   安保理によれば、世界中で去年1年間に亡くなったPKO隊員は126人だ。そのため、今年6月、PKOの改革案がまとめられた。内容は「紛争地の市民を守るため、(武器使用など)あらゆる手段を講じる」というものだ。

積極的な武器使用容認

   再び国谷が問う。「PKO任務はより危険で複雑になっていると思いますか」

   ヤン「おっしゃる通りです。しかし、国連がやらずに誰ができるでしょう。ほかに道はなかったのです」

   国谷「国連の報告書では『すべてのPKO隊員は住民が差し迫った危機に瀕している場合、できる限りのことをしなければならない』としています。これは武力行使も含まれると思いますが、その境界線はどこにあるのでしょうか」

   ヤン「そもそもPKOは戦闘のために設立されたものでもなく、テロリストと戦うものでもありません。あくまで任務は住民を保護することです。しかし、民間人の安全が脅かされれば、われわれは行動を起こさなくてはならないのです」

   今年70周年を迎える国連が危機に瀕していることはよく分かった。しかし、成立したばかりの安保法制が国論を二分しているこの時期に放送する必要があったのか。タイミングにはちょっと疑問が残る番組だった。

NHKクローズアップ現代(2015年9月28日放送「国連70年①相次ぐ紛争そして難民・・・平和は取り戻せるか」

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