「北里大の3奇人」大村智教授の悪ガキ時代!喧嘩っ早くて荒っぽくって利口ではなかった・・・

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   NHKが40年前に制作した「褐色の風土」というドキュメンタリーが残っている。アフリカで蔓延していたブヨによって媒介される寄生虫病「オンコセルカ症(河川盲目症)」の実態を取り上げたものだ。村に住む男たちは必ず失明する。20歳を過ぎるころから視力が衰え始め、数年後には完全に見えなくなる。失明した大人たちは子どもの手を借りて生活する。寄生虫がリンパ節に入り込むと、足がゾウの足のように腫れ上がり歩行できなくなる。

   この悲惨な状況を救ったのが、ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授(80)が開発した抗寄生虫薬「イベルメクチン」だった。伊豆のゴルフ場で採取した土壌に含まれていた特殊な菌エバーメクチンをアメリカの大手製薬会社に提供し、イベルメクチンが誕生した。

   今でもアフリカを中心に28か国、年間1億2000万人に無償で提供されており、ガーナ大学野口研究所のマイケル・ウィルソン教授は「大勢の人を病気から救ってくれました。本当に素晴らしい薬です。今や若い人たちに病気の心配はありません」と感謝する。

研究資金ないから動物向け新薬に取り組んだ

   大村教授が生出演した。「人々を寄生虫の恐怖から救い出す薬が大村さんの発見した微生物から生まれたわけですが、やったあと実感されたのはどんな時でしたか」と国谷裕子キャスターが聞く。

「一番実感したのは、2000年にアフリカの現地に行ったときです。今回、子どもたちに囲まれてピースサインをしている写真がテレビで使われていますが、そばの大きな木の下にはみんな目の見えない大人たちがいたのです。ああ、良いことができたなと思いました」

   国谷「採取した土壌に菌があったとしても、きちんと分けて培養し、化学物質に到達しなければ発見できなかったわけですよね」

「そうなんです。これが私どもの研究室の特色で、土壌を採取し菌を選り分けて培養、作っている化合物の構造を決める作業で4教室あります。それが一丸となってやっているんです。これがなければとてもここまで来れなかったですよ」

   国谷「北里大からは、自分でお金を取ってこなければ研究資金は出ませんよと言われたと聞きます。自分で資金調達をしなければできなかったわけで、そこで動物薬の開発に乗り出したのでしょうか」

「人が使う薬を開発するには大会社並みの資金がいります。特色を出そうと考えたのが動物薬でした。成功したのが動物向けの寄生虫薬だったのです。イベルメクチンが有名になっていますが、われわれの間ではもっと有名な薬があるんですよ。それができたのは団結力の積み重ねです。
ある教授から『大学に3奇人がいるが、誰か知っているか』と聞かれたことがあるんです。2人は分かったが、3人目がどうしても出てこないでいると、『お前だよ』と言われました」

「幸運は強い意志を好む」「自分がどれだけやる気があるかが大事

   1935年に農家の長男に生まれた。村の中心人物だった父と教師の母、それに優しい祖母に囲まれ伸びのびと育ったらしい。少年時代は地元でも有名なガキ大将だった。姉の山田淳子さんは「本当に悪玉でしたね。喧嘩っ早くて荒っぽくて。『智ちゃんがまた喧嘩だよ』という知らせで飛んでいくと、ベルトを外し振り回していて。勉強はできなかったし、利口ではなかった」という。

   高校、大学時代はクロスカントリースキーに没頭し、山梨県大会で5回優勝、国体にも2回出場している。22歳で大学を卒業すると、昼間を自由に使えるからと東京都立墨田工業高定時制の教諭になった。

   ところが、昼間働き、夜勉強する教え子たちのひたむきな姿を目のあたりにして、反省する。一念発起し、昼間は東京理科大大学院で学び、夜は高校教諭を続けた。土日は徹夜で実験に取り組む日々で、15年前に亡くなった妻の文子さんによると、当時は「頬はこけ、まるで病人のようだった」という。

   国谷キャスター「研究者として一番大事なことはなんだと思いますか」

「自分がどれだけやる気があるかが大事でしょうね。パスツール(フランスの生化学者)の『幸運は準備された心を好む』という言葉を借りて、私なりにモデファイ(一部修正)すれば『幸運は強い意志を好む』。やろうと思ったことを徹底的に頑張ってやることです。今の若い人は大事に育てられてきていますから、がまんする耐性が弱くなっている。いい加減なことではへばらない、乗り越えていく。それを持ってほしいです」

*NHKクローズアップ現代(2015年10月7日放送「生出演・大村智さんが語るノーベル賞受賞秘話」

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