知ったら怖くて入れない繁華街木造雑居ビル「火事になったらたちまち丸焼け。避難路なし」

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   広島の歓楽街、流川の雑居ビルで先月8日(2015年)に起きた火災は、メイドカフェの従業員や客6人が死傷する惨事になった。昭和23年頃にできた木造2階建てで、何度もリフォームされていたが、広島市にはこの建物の記録がなかった。建築基準法とも安全対策とも無縁のこうした危うい建物が全国にどれくらいあるのか、だれにもわからない。

   広島のこの地区は昭和51年防火地域に指定され、100平方メートル以上の木造新築は禁止されたが、それ以前の建物は建築基準法上「既存不適格」(昭和46年改正)として存続が許された。焼けたビルの改造には申請が必要だが、所有者から申請はなかった。「既存不適格」という登録でもなかったわけだ。

   飲食店など不特定多数が利用する建物について、自治体は所有者に建物の現状の「定期報告」を義務づけているが、広島市では3階建て以上が対象で、2階建てのこの建物は対象外だった。

   チェックの網が全くなかったわけではない。市消防局は8年間に5回の立入検査をしていたが、調べたのは消化器、火災報知器など消防設備のみで、建物の構造や材質など建築基準法の観点では見ていなかった。消防局は「あくまでも消防なので、消防法に基づいて検査します。構造などは指導できません」という。

   広島で複数の雑居ビルを所有する会社の幹部は、「(法以前に)建っていたら法も市役所も考えない。何も言ってこん。ノーチェックですよ。ベニヤ板だろうがなんだろうが、申請はしないし、どんなリフォームしようがいいんですよ」と話す。

国交省もようやく「既存不適格」建物の実態調査指示

   こうした危うい実情が浮き彫りになったのが、3年前に7人が死んだ福山市のホテル火災だった。「既存不適格」で、申請なしで違法なリフォームをしていた。専門家は「申請を待つだけという行政に問題がある。申請しなければ違法だと指摘することもできない」という。

   この火災をきっかけに、国土交通省は全国の自治体に「既存不適格」の可能性のある宿泊施設の緊急点検を求めた。対象1840件のうち867件(47.1%)が建築基準法に違反していた。

   広島のような雑居ビルでは、テナントが変わればリフォームするのは当たり前だが、改造、増築以外はまず届け出ない。リフォームも防火のことは考えることはない。行政は把握できず、事故が起こってからわかる。その繰り返しだ。国交省は自治体に飲食店の緊急調査を求めているが、NHKが調べたところ、人口25万人以上の都市で1100件以上が対象となっていた。

京都市は各担当部局連携で物件ごとの診断書

   こんな話の中で木造家屋がびっしり並んだ京都の町並みが出てくると、ギョッとする。ひとたび火が出たら応仁の乱さながらは間違いなかろう。いま京都では築100年以上という建物が次々とレストランやカフェに改装されている。既存の建物を利用した宿泊施設も急増している。京都市は動いていた。

   建物の安全を担当するのは建築安全推進課だが、これに防火の消防局、飲食店の営業許可を所管する保健福祉局、宿泊施設に詳しい産業観光局が加わって、建物の安全に関する情報の共有を図っているのだ。建物ごとに1枚の紙にそれぞれの局が情報を書き込み、一覧できるようにした。これで安全を脅かす火種を未然に察知して防ごうというアイデアだ。

   所有者からの情報収集にも力を入れている。「定期報告」も以前は飲食店は床面積1500平方メートル以上が対象だったが、2年前に500平方メートル以上にした。これで対象は600件から3900件に増え、窓口での「定期報告」をめぐる職員と所有者のやりとりも具体的で熱がこもるものになった。

   長谷見雄二・早大教授は「京都の試みはすばらしい。建築物の安全は建物と消防対策と管理者の意識にかかっています。弱点を共有することで、弱いところを他が補うとかができる。安全を考え直す機会になると思います」という。

   火事になったメイドカフェに花をそなえている男性がいた。火災で建物の実態を知って驚いたという。「危険だなんて思いもしなかった」という。そうなんだ。雑居ビルに入るとき、非常口や窓の外がどうなってるかなんて誰も考えない。心配し出したら、酒なんぞ飲んでいられなくなる。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2015年11月5日放送「繁華街に潜む「死角」 『メイドカフェ火災』の波紋」)
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