肝心の地震の時に崩落?「橋の耐震補強」安全装置手抜き!全国で556か所

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   阪神淡路大震災のあと、国が進めてきた橋の耐震補強工事で橋脚に取り付けられた安全装置の部品が、意図的に手抜きされていたことが明らかになった。わかっているだけで45都道府県の556か所。手抜き部品を作っていたメーカーは12社に及ぶ。

   発端はこの7月(2015年)のことだ。京都市内の幹線国道の勧進橋の工事で、「部品が注文通りに作られていない」という匿名の通報があった。調べてみると、耐震安全装置86点の7割が不良品で、部品の溶接部にすき間があった。

   この道路は災害時の救助・救援に使われる「緊急輸送道路」の指定を受けており、橋は絶対に落ちてはならない。安全装置はいわば「命をつなぐ装置」だ。国土交通省などの実験では、部品のすき間から亀裂が生じて破断してし、想定の強度を満たさないことがわかった。

検査に出すのは正しく作った部品だけ

   手抜き部品を作っていた福井市の久富産業は従業員30人の中堅部品メーカーだ。元請けの聞き取りに答えた内部文書によると、「加工時間を短縮するために 溶接工程を意図的に省いていた」「正しく作った部品だけを検査していた」とあった。会社ぐるみの不正だと認めた。

   検査は外部の検査会社が行っていたが、検査員は久富産業を10年も担当していて、「傷がみつかっても言わないで」という要請を断れなかったという。不正に加担していたのだった。

   溶接の工程はくさび形の片側から溶接したあと、反対側から削りを入れてすき間をさらしたうえで、溶接する。「完全溶け込み溶接」といって、強度が確保される。この「削り」を省いていたためすき間ができていたのだった。

   これを12社がこぞってやっていた。その1社の幹部は「長年の習慣になっていた」といった。見つかった不正はこの5年ほどに集中しており、数はまだえるともいわれる。

金属加工業者「作業省けばコストは4割減」

   なぜそんなことをしたのか。ある金属加工業者は「作業時間、溶着金属、あらゆるコストダウンになる。おそらく4割は安くなる」と話す。目先の利益を追って後先考えないのでは、どこかの国と一緒ではないか。

   高木千太・首都高速道路技術センター上席研究員は「がっかりした」という。東京都で元橋梁担当だった。「この耐震補強装置は昭和50年代から使われていて、耐震では日本が世界に誇れる装置なんです。その足元をすくわれた」

   高木氏は技術者に求められるものとして、「技術力」「倫理観」のほかに「想像力」をあげる。「欠陥があったら何が起るか」を想像する力だ。これがゼロだとすべてがゼロになる。実態として、「完全溶け込み溶接は6割 くらいではないか」ともいう。

   不正が明るみに出て元請けも検査の強化に乗り出した。久富産業の部品を使った橋が100か所もある「ショーボンド建設」は、部品の検査会社を直に選んで、 部品会社の検査とダブルで無作為抜き取り検査を行っている。発注元の「広島高速道路公社」は5年前から不正にはペナル ティーを課すことにしたら施工ミスや隠蔽がなくなったという。

   高木氏は、「本来元請けがしっかりと機能していれば起こらないこと」という。第三者の検査会社とか法規制の必要もあるかもしれないとも指摘する。だが、第3者を頼るのは、自戒の能力がない証拠だ。耐震偽装も先の杭打ち偽装もそうだった。いや建設関係だけじゃない。政界、金融、マスコミ、どこもかしこも第三者機関のオンパレードだ。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2015年12月11日放送「橋の『命綱』が危ない~公共工事 はびこる不正~」)

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