2018年 9月 21日 (金)

<母と暮せば>
涙が流れると体が消えてしまう息子・二宮和也、一人生き残った母・吉永小百合・・・ファンタジーで描いた原爆投下の理不尽

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   「父と暮せば」で原爆投下後の広島、「木の上の軍隊」(未完)で沖縄を舞台に描いた井上ひさしの遺志を山田洋次監督が継いだ。長崎の原爆投下から3年後の1948年8月9日、助産婦をして暮す伸子(吉永小百合)の前に原爆にあって亡くなったはずの息子・浩二(二宮和也)がひょっこりと現れる。伸子は浩二が現れたことに喜ぶが、浩二の姿は伸子にしか見えない。

なぜ原爆死から3年目に現れたのか・・・

   浩二はそれからしばしば伸子の前に現れ、二人は楽しかった時代の思い出や他愛のない話に花を咲かせる。浩二にとって一番の気がかりは恋人・町子(黒木華)の近況だ。死んでもなお町子のことを諦めきれない浩二に、伸子は「お前はもうこの世の人じゃなかやろ。そこをよう考えてちょうだい」と優しく諭す。浩二は涙を流し、思わず抱きしめようとする母の腕の中ですうっと消えていく。

   浩二は悲しくなって涙を流すと姿が消えてしまうというファンタジー的要素もあり、どの世代にとっても観やすい仕上がりになっている。しかし、そもそも、なぜ原爆投下から3年もたって突然、浩二は伸子の前に現れたのか。その理由を考えると、原爆の恐ろしさと、それに抗うことができない人間の非力さが途端に目の前に立ち上り、辛くなってしまった。

   息子とのかげかえのない幸せな時間は、戦争で一人生き残ってしまった女性に、最後に神様が与えてくれた試練と特別な夢だったのかもしれない。

   おススメ度☆☆☆☆

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