夢の終の棲家計画「日本版CCRC」絵に描いた餅!?年金だけでは暮らせない

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   国は高齢者を元気なうちに地方に移住させ、終の棲家として暮らせる地域共同体を整備しようとしている。狙いは人口減少が進む地方に新しい人の流れを作って活性化させ、医療・介護人材の不足に直面する首都圏の問題も同時に緩和させるというものだ。

   お手本になっているのがアメリカのCCRC。「Continuing(継続的な)」「Care(ケアを受けられる)」「Retirement(高齢者の)」「Community(地域共同体)」の略称で、米国では多数の成功例が報告されている。自治体や企業に参加を呼び掛けていて、補助金が出ることもあって現在263の自治体が手を上げている。

   「地方創生」と「高齢者問題」を同時に解決できる夢のような政策が本当に実現可能なのか。さまざまな課題が浮かび上がってくる。

福岡県朝倉市「美奈宜(みなぎ)の杜」の誤算!1000人移住のはずがたった200人

   20年前に福岡県朝倉市に全国に先駆けて開発されたCCRC「美奈宜(みなぎ)の杜」は、総事業費300億円で住宅ゾーンやコミュニティセンター、多目的ホールやフィットネスクラブ、さらにはゴルフ場なども建設される「夢の街」となる予定だった。3000万円の家を退職金で購入した前田幸保さんはこう話す。「何でもそろってるから安心して住めると思いました。ユートピアという気持ちで過ごせる街という雰囲気があったんです」

   ところが、街は計画とはかけ離れたものになっていく。1000人と見込まれていた入居者は実際には200人しか集まらなかった。そのため開発業者の経営が悪化して、多目的ホールやフィットネスクラブなど老後を生き生きと暮らすための施設の建設が次々と中止となってしまったのだ。

「ユートピア的な構想が半分でも実現できればいいですよ。1、2割で終わっちゃった」(前出の前田さん)

   詐欺のような話だが、アメリカでは成功しているCCRCが日本ではどうして機能しないのか。福祉政治論が専門の中央大学の宮本太郎教授はこう説明する。「アメリカのCCRCは基本的には富裕層向けの民間の事業なのです。入居費用が数千万円、毎月数十万円のお金を払います。日本の場合は厚生年金の平均受給額21万円を受け取っているような普通の人たちが移住の対象になっていくんです。そうした人たちが(それまで住んでた)家を処分して移って、さらにその経済力でなんとかやっていく条件が確保できているかどうか。大きな問題です」

空き家活用で低生活費のタウンつくり

   多くの資金を必要とするCCRCではなく、なんとか身の丈にあった街づくりはできないものか。模索を始めた自治体がある。同じ福岡県の北九州市は空き家を利用して都会の高齢者に移住してもらう計画を進めている。新たに施設を作らずに済むため、大幅はコストダウンが期待できる。病院や介護施設もすでにあるものを利用する。北九州市地方創生推進室の岩田健担当課長が言う。「市が土地を用意して建物を建てて、という時代ではないと思うんです。空き家は増えてきてますんで、そこをマイナスに捉えずにうまく使おうということです」

   国谷裕子キャスター「2つの例が出てきたんですけど、CCRCといいますと、一つの地域にいろいろなもの(施設)を作って、高齢者の街を作るという、言わばエリア型。これに対して、北九州の例は今ある施設を使うタウン型と言えると思います」

   宮本教授「富裕層を相手にエリア型を作るのはいいと思うんですけど、日本ではもっと広範な人たちが移住の対象となりますので、既存の施設や空き家をうまいこと利用して、地域で支えあいの関係を作っていくのはいいと思います。豪華なフィットネスジムで元気になるというよりは、地域の世話焼きをやりながら、そのことで健康を維持していく。こんな形が身の丈に合った小さなCCRCの方が日本には合ってるんじゃないかなぁと思います」

ビレッジマン

*NHKクローズアップ現代(2016年2月15日放送「高齢者の『大移住』が始まる!?~検証・日本版CCRC~」
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