2024年 4月 16日 (火)

沖縄にとって脅威は米兵なんです・・・日米地位協定で守られた「治外法権」基地に逃げ込めば無罪放免

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   沖縄北部の山林の一角の草が生い茂る中に、多くの花束が手向けられている。島袋里奈さん(20)がウォーキングの途中に殺され遺棄された現場だ。雨の降るその現場で、大学院に通う砂川真紀さん(26)が熱心に祈っていた。身近な友人が島袋さんと同じように襲われたが、訴えることができず苦しんでいるのだと話す。

   沖縄では、米軍関係者による強姦事件の被害者が泣き寝入りするケースが多い。日本で裁けない日米地位協定の制約、訴えても世間の晒し者なるだけというわけだろう。沖縄に基地があるがゆえの殺人や強姦などの凶悪事件は、警察が把握しているだけでも復帰以降の40年間で600件近くにのぼる。しかし、それは訴えがあった犯罪だけだ。

レイプされても泣き寝入り・・・友人にも話せず一人で絶望

   砂川さんは友人の体験をこう語った。友人は見知らぬ米兵に乱暴され、殺さるのではないかという恐怖を味わった。そのことを砂川さん以外の誰にも打ち明けられず、今も深い心の傷に苦しめられているという。「友人は今回の事件の彼女と同じような経験をしたんです。今でも警察にも言えなくて泣き寝入りです。命あっても、心臓が動いていても、生き生きとできないって話していて、彼女の一生を奪ったんだなと思います。安全を守る、暮らしを守る名目で基地があり、米兵が何万人もいる。でも、沖縄の人にとって、米兵自身が脅威なんです」

   今回の事件がきっかけでようやく口を開いた人もいる。金城葉子さん(61)は17歳の時、米兵に首を絞められ強姦されかけた。「被害を訴えれば世間から注目されてしまうと口を閉ざしてしまったが、今も辛い記憶のフラッシュバックに苦しめられ、精神安定剤を手放せない状態です」と語る。口を閉ざしたことで自分以外にも被害を受けた女性がいるのではないかと、自責の念に駆られるという。

   「声に出せなかった被害者がこれだけいるとはショックでした」と話す鎌倉キャスターに、一緒に取材したNHK沖縄放送局の西牟田慧記者はこう話す。「表に出ないこうした被害者の数が実際にどのくらいかはわかりません。綱紀粛正が叫ばれるなかでも事件・事故が起きるのは、沖縄の人たちが繰り返し見てきている現実なのです」

アメリカ憲法でも裁けない米兵・米軍属の犯罪

   大きく横たわっているのが、被害を訴えても裁かれない日米地位協定の壁だ。地位協定では事件の容疑者が基地内に逃げ込み、米側が先に身柄を押さえると、沖縄県警の捜査は大幅に制約される。起訴するための捜査も原則任意でしか行えない。

   では、容疑者は米側の取り調べを受け、実際に裁判で裁かれているのか。地位協定では、公務中に起こした事件・事故は米国に優先的に裁判権があると定められている。地元の池宮城紀夫弁護士は「公務中の事件・事故はすべて無罪放免されています。この実態が日本国民、沖縄県民に知らされていなかったんです」と明かす。

   実は、米国内には「平時に軍属を軍法会議に掛けることは憲法違反」という判例がある。このため、地位協定で日本側は公務中の軍属の犯罪は裁けないだけでなく、米側も平時は軍法会議で裁けないというおかしな『法の空白』ができていたのだ

   最近、日米両政府は地位協定の運用改善を行い、軍属が公務中に犯した事件・事故でも日本で裁判できるように改めた。それでも、日本側が要請した場合にかぎり「米側が好意的考慮を払う」とされただけで、裁量は米側に委ねられている。

   鎌倉キャスターは「沖縄の方たちは、あと何人の犠牲者を出せばいいんだという思いでしょうね」とタメ息をついた。

   西牟田記者「大きな事件・事故があると、運用改善によって個々の課題に対処してきました。そうして得た改善でさえも、別の新たな事件・事故は防ぎきれません。沖縄県民の思いの蓄積が、いま抜本的な地位協定の改定を求めているのです」

NHKクローズアップ現代+(2016年6月15日放送「沖縄 埋もれていた被害~米軍属女性殺害事件の波紋~」)

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