米国との停戦を薦める打電を無視された陸軍武官情報将校の孤独。香川 照之と薬師丸ひろ子夫婦の大戦秘話
<百合子さんの絵本>(NHK総合)

印刷

   第2次大戦中のストックホルムで、大使館付き陸軍武官の情報将校・小野寺信(香川照之)の妻・百合子(薬師丸ひろ子)が、機密の暗号電文を手伝った日々の物語。要するにスパイの妻は暗号電文翻訳を日夜手伝わされたという内容である。後にムーミン翻訳家として活躍する女性の実話であるが、信の正確な情報は、ドイツと同盟国家であった日本の大本営に握りつぶされて、信がアメリカと早期に停戦すべきと進言したにもかかわらず、へなちょこ情報ばかり送るなと逆に非難された。戦後から見れば信は一種の英雄なのだが。
   池端俊策の脚本で、国に3人の子を残してゆく母親の覚悟や、遠く離れた子供達への切ない思いなどはよく描けていたが、肝心の信の活動をあまりにも正義と捉えすぎている。スパイはスパイなので、国家の手先として諜報活動する男は、どこまで行っても日陰の身である。それを、あたかも彼は先見の明があって、1人悶々と悩みながら進言したのに受け入れられなかったと被害者のように書くのはどういうものだろう。
   ドイツ大使・原島浩(吉田鋼太郎)がヒトラー信奉者であったことも、当時はあり得る。今でこそナチスは諸悪の根源と扱われているが、駐ドイツ大使としては当然の行為、小野寺=善で原島=悪の図式はあまりにも単純すぎる。
   薬師丸は35歳から75歳までを品よく演じ、あの時代のつつましい母親像をよく表現した。香川も相変わらず上手い。(放送2016年7月30日21時~)

(黄蘭)

採点:0.5
  • コメント・口コミ
  • Facebook
  • twitter

このエントリーはコメント・口コミ受付を終了しました。

注目情報PR
追悼
シニアの健康ライフ
Slownetからのおすすめ記事(提携)

お知らせ

電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中