吉田沙保里「新高速タックル」で狙う五輪3連覇!スピード低下カバーする回り込み戦法

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   五輪4連覇を目指す女子レスリングの吉田沙保里選手(33)が得意の武器である「高速タックル」を一から見直し、新たなスタイルでリオデジャネイロ五輪に臨もうとしている。

   相手のスキをついて足元に飛び込む高速タックルは瞬発力がモノをいう。しかし、年齢による体力の衰えから相手にかわされることが増えた。吉田は新たなスタイルのタックルを編み出し、「何度やっても負けない自分を作りたい。4連覇は絶対したい」とトレーニングを続けた。

相手と組み合い体勢崩して飛び込み

   高速タックルが通用しなくなったのは昨年9月(2015年)、アメリカ・ラスベガスで開かれた世界選手権だった。13連覇をかけた決勝で思わぬ苦戦を強いられた。相手は世界ランキング2位のマットソン選手(スウェーデン)で、高速タックルを何度繰り出してもかわされ続けポイントにつながらない。1ポイント差で逃げ切ったものの衝撃は大きかった。

   試合後、吉田は「負けるかと思ったし、負けたらどうしようと不安でしょうがなかった」と涙を流した。マットソンは「これまで歯が立たなかったが、今回でほとんど差がなくなった」と自信を強める。リオ五輪で最大のライバルだ。

   吉田の高速タックルは予備動作なしで相手の一瞬のスキを狙い、身を躍らせて足元に入り込む。相手は「来た」とわかっても避けることができない。なぜ高速タックルが決まらなかったのか。吉田は30歳を過ぎた自分の体力に異変が起きていると感じたようだ。「疲れとか、若い子たちと同じメニューで練習しているのできついとか、年齢には勝てない。いつかガタが来る。あとは気持ちでもっていっている。無理やり」と話す。

   吉田を16年間指導してきた栄和人監督も、世界選手権で吉田が苦戦したのは肉体の衰えからタックルのスピードが落ちたと考え、ある指示を出した。腰から下への攻撃を禁じたグレコローマンスタイルを参考にした新たなタックルの開拓だ。スピードよりも駆け引きが重要になるため、今の吉田に向いていると判断した。30年間のレスリング人生で初めて追い込まれた根本的なスタイルの変更。吉田は新たなスタイルの練習に取り組みながら、得意のタックルを生かす方法を考え続けた。

   従来の高速タックルは、距離を置いて正面から相手の下半身に飛び込む。瞬発力がないと相手は両手で防御し、足を引いてかわされてしまう。吉田が編み出した新たな技は、いったんグレコローマンのように相手と組み合い、相手の側面に回り込みながら体勢を崩し、生じた相手のスキをついてタックルして一気に倒す戦法だ。「横から入ることで相手も止めにくくポイントを取りやすい」という。

女子レスリングは17、18日に試合

   新タックルは専門家も「理に適っている」という。アスリートの動体解析に詳しい中京大学スポーツ科学部の湯本景元教授はこう見る。「高速タックルは瞬発力に優れた太ももの前の筋肉を使います。新タックルは相手の横に回り込むときに太ももの後の筋肉を使う。この前と後の筋肉は年齢を重ねることによる影響が異なるんです。

   太ももの前の筋肉は衰えが早い。後の筋肉は比較的衰えが遅い。吉田選手は後ろの筋肉はまだ衰えていないはずなので理に適っています」

   12年前のアテネ五輪以来の親友というサッカー女子元日本代表の澤穂希がゲスト出演した。吉田の壮行会に出席した時の感想をこう話す。「前人未到の4連覇に向けた強い意気込みで、『リオでは金メダルを取る』と話してくれました。進化を求め、日々努力しているのが彼女の強さなんだなと思いましたね」

   吉田を指導したこともある金浜良・元レスリング日本代表コーチは「体力が落ちたと言いながら、今回、日本選手団の主将を受けた。選手はできることなら試合だけに集中したいので、そこは悩むところでしょう。その度胸はすごいと思うし一段と強くなったなと思います」

   女子レスリング日本代表は吉田のほか、同じく4連覇を目指す伊調馨(58キロ級)や世界選手権3連覇の登坂絵莉(48キロ級)ら5人がいる。いずれも吉田が卒業した愛知・大府の至学館大学の後輩たちだ。試合は日本時間17、18日に行われる。

モンブラン

NHKクローズアップ現代+(2016年8月3日放送「リオ五輪『最強伝説』への道 レスリング吉田沙保里 進化する『女王』」)

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