<カノン>
認知症の母にあの曲をもう1度聞かせたい・・・虐待の記憶と愛おしさに揺れる三姉妹

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   富山県黒部市に住む小学校教師の次女・藍(比嘉愛未)、東京で夫と二人の子どもと暮らす専業主婦の長女・紫(ミムラ)、金沢で老舗料亭の若女将をする三女・茜(佐々木希)の三姉妹は、祖母の葬儀で久しぶりに会った。祖母の遺書にはたったひとこと、「許してください。あなたたちのお母さんは生きています」と書いてあった。

   母・美津子(鈴木保奈美)は姉妹が幼かった頃、父の死をキッカケに酒に溺れ、わが子を虐待するようになって、3人はいつも怯えながら生活していた。美津子は19年前に火事で重傷を負ってからは一人離れて暮らし、姉妹は父方の祖母に引き取られて育った。

   姉妹は火事のあと1度も母に会っていない。母あてに手紙を書き続けたが、返事はなく、数年前に母は亡くなったと祖母から聞かされていた。それが「認知症」施設にいたのだ。施設を訪ね、変わり果てた母の姿に愕然とする。

  • ©2016「カノン」製作委員会
    ©2016「カノン」製作委員会

アルコール依存で死んだと聞かされていたが・・・

   藍は「あのときはアルコール依存症で分からなくて、今は認知症で分からなくて、あなたが責任取れるのはいつなのよ!」と母を厳しく問い詰め、ハッと目覚めて夢だったのだと気づく。しかし、それが自分の本心なのではないか。

   茜は料亭の経営に悩み、仕事中に隠れてウィスキーをあおっていた。紫は夫からのモラルハラスメントにあっている。夫は紫の些細な過ちをせめて反省文を書かせるのだ。藍は過去の記憶のフラッシュバックに怯えている。3人とも母からの「負の遺産」を背負って生きていた。

   施設で母が大事にしていたオルゴールを開くと、パッヘルベルの「カノン」が流れる。小学校のピアノの発表会で手作りの招待状を3人は離れた母に送ったことがあった。そのとき3人が弾いた曲が、3人が追っかけっこをして弾くと素敵な曲になるという「カノン」だった。それは母娘が幸せだった頃、母が教えてくれた曲だ。発表会招待への返事はなかったが、母はそっと会場の片隅でそれを聞いていた。

あの鈴木保奈美ボロボロ母親役に挑戦

   母にもう1度「カノン」を聞かせたい。3姉妹は強く願う。しかし、グランドピアノを3台並べるには余程大きな会場を借りなければならない。そこで藍の婚約者がある特別な会場を用意した。3人の「カノン」三重奏が始まる。母も聞いている。3人の思いは母に届くのであろうか。これは母と三姉妹の再生の物語である。

   登場人物がやたらと泣かないことに好感が持てる。「カノン」の調べに心が洗われる思いだ。あの「東京ラブストーリー」の鈴木保奈美がこんな役を演じるようになったのかと驚く。

佐竹大心

オススメ度☆☆☆

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