2024年 4月 26日 (金)

パートの「社会保険」プラスかマイナスか・・・10月から条件引き下げ「週20時間以上」

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   10月(2016年)から短時間で働くパートも正社員並みに会社の厚生年金や健康保険に入れるようになった。非正規の労働環境を改善して、将来の労働力不足に備えるようというというのだ。2020年度末までに430万人が不足するという試算もある。

   社会保険の適用にはこれまでは週30時間以上働く必要があった。これを週20時間に引き下げ、年収106万円以上、従業員501人以上などの条件で可能になった。会社が保険料の半分程度を負担し、年金の負担額は退職金に跳ね返るなど、働く側には間違いなくプラスなのだが、目前の賃金の手取り額が減る人も出る。これは悩ましい。

勤務時間増やして負担減のシングル、短縮で減収の扶養主婦

   関東中心に139店舗あるスーパーで働く斎藤玲子さん(62)は、社会保険に加入した。シングルマザーで息子を育て、いまは一人暮らしだ。5年前からレジ係で週5日、25時間働いている。国民年金・国民健康保険を払ってきた。これが正社員並みになった。健康保険の給付は国民健保より充実している。高額医療への対応、休業補償も手厚い。

   同じスーパーで労働時間もほぼ同じ主婦の斉藤淳子さん(54)は、加入しなかった。13年前から働いているが、夫の扶養になっているので保険料は払っていない。月収は9~10万円だが、ここから保険料の1万5000円が差し引かれるのは大きい。同じ収入を守るには週に4時間余分に働かないといけない。しかし、81歳になる夫の母親の介護があるので、それができない。結局、労働時間を20時間以下に減らし、収入が1万円減った。

   スーパーの「いなげや」が新たな社会保険加入の希望を調べたところ、「保険料負担が重い」などの理由で、未加入希望が53%、加入47%だった。都内のある店舗では、71人のうち15人が労働時間を短縮したため、週77時間分の労働力不足になった。この懸念は深刻だ。スーパーでは労働時間を増やすようさまざまに働きかけており、前出の斎藤さんは10時間増やして週35時間に応じることになった。

新たな「106万円の壁」どうクリア?

   東京大社会科学研究所所長の大沢真理さんは「この例はホワイト。もっとブラックで、社会保険料を払いたくないと勝手に労働時間を減らすような企業も多いんです。仕事が細切れになる恐れがあります」と説明する。

   モデルケースによる比較で状況はさらにはっきりした。大沢所長は「負担は増えても、一部は将来の年金で返ってくるもの。そこが違う」という。試算だと、45歳から65歳まで保険料を納めれば、年金に跳ね返り、81歳で元が取れる。「利率のいい預金をしていると考えたらいい」

   ただ、主婦の働きたいという気持ちを阻んでいる壁はまだある。会社員の妻で、パートで働くC子さんにとって、1つが社会保険の壁である「106万円」。保険料を払うようになると収入が減る。もう1つが配偶者控除で「103万円の壁」と言われる。103万円を超えない限り、夫の配偶者控除で税金が安くなる。

   これを実際にシミュレーションしてみると、年収100万円のC子さんの収入が」が120万円になると、配偶者控除がなくなり、夫の会社には家族手当もあるが、これもなくなり、トータルでは年に22万5000円減ってしまうのだ。さらに、賃金の男女比というのがあった。内閣府の男女共同参画局が作ったものだというが、ひどいものだ。男性を100%とした場合の女性の賃金を比べると、最高のスウェーデンは70%、フランスがそれに次ぎ、米国が60%前後、イギリス、ドイツが50%前後なのに対して、日本は30~35%だ。

   大沢所長は「大事なのは、これが時間給、働く数、何時間働くかなどすべてを掛け合わせた結果だということです。女性の発言権や地位をも示しています」という。「なんとか壁を取り払わないと」

   視聴者からのメッセージに「手取りが減っても、社会保険に入ったほうがいいのか教えて下さい」(40代男性)というのがあった。これが日本の現実だ。非正規の低賃金が安い物価を支えていることは誰もが知っている。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代+(2016年10月6日放送「シリーズ あなたの働き方が変わる!? 収入アップ?ダウン?~」)

文   ヤンヤン
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