2024年 4月 19日 (金)

「IS壊滅作戦」死に物狂いの反撃!トンネルに隠れて挟み撃ち、子ども自爆要員、住民100万人人質・・・

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   イスラム過激勢力IS(イスラム国)が拠点を置くイラク北部の中心都市モスルへ、イラク軍がアメリカなど有志連合の支援を受けて進攻し、激戦がつづいている。作戦には10万人が参加、モスルを奪還すればイラクとシリアにまたがるIS支配地域を分断でき弱体化につながる。イラク軍は先週末(2016年11月5日)にモスル東側地区を制圧した。指揮を執る少佐は「完全解放も間近だ」と語る。

   しかし、予想以上の苦戦だ。激しい戦闘の映像が流れる。モスルまで20キロの村を制圧したが、イラク軍の前後に突然ISの戦闘員が現れ、挟み撃ちにあった。足を負傷したイラク兵士のステファン・ナジーブさんは「突如攻撃してきた。ISはトンネルを使う。前から来るか、後ろから来るかわからない」と話す。

   地下トンネルが網の目のように張り巡らされていた。対IS専門家のヒシャム・ハシミ氏は「ISの狙いはトンネルを使い、イラク軍の進撃を少しでも遅らせること。長期戦に備えている」と見る。

民間人犠牲にしながら長期戦の構え

   ISの指導者バグダディは先週、「やつらを血の川にしろ」と戦闘員をあおった。ISは支配地域の子どもたちを戦闘員の穴埋めとして送り込む。洗脳して自爆要員にもする。11歳から16歳の部隊もあり、子どもを使った宣伝映像もある。

   100万人いるといわれるモスル住民を戦闘地域に釘づけにして、「人間の盾」にもする。反IS系ラジオ局の取材に、場所を特定させない条件で応じた女性住民は「外へ出ることを禁止され、違反すれば殺害されます」「家を一歩も出られない。すでに大勢が巻き添えになりました」と語った。

   鎌倉千秋キャスターが「モスルへの進攻は3週間前から、シリアのIS拠点ラッカへもきのう6日から攻撃が開始されました。状況はどうなのでしょう」と、モスル近くのアルビルにいるNHKカイロ支局の渡辺常唱支局長に聞く。「かつてない過酷な市街戦だと特殊部隊の隊長はいっています。戦闘はこれから一段と厳しくなりそうです」

   住民の犠牲を避けながらの拠点都市奪還は容易ではない。モスルの重要性を中東調査会の高岡豊・上席研究員はこう分析する。「イラクの西部や中部で他の拠点を奪還しており、最後の拠点です。アメリカ大統領選が近いこともあって、国際的にも有志連合が攻勢に出ています」

   ただ、イラク軍は国内の東から攻めているが、ISの地盤はむしろ西側にある。「ISは民間人の犠牲を出すことで長期戦にし、有志連合の足並みの乱れをさそうことを狙っています」と高岡研究員はいう。

攻撃側も混成部隊・・・宗派も民族も政治的野心もバラバラ

   奪還作戦にはイラク軍、クルド人部隊、地元民兵らが参加しているが、民族も動機も政治的立場もばらばらだ。とくに、モスル住民の大半がイスラム教スンニ派なのに対し、イラク軍兵士はシーア派。東側の村を制圧したイラク軍は国旗とともにシーア派の旗を上げた。イラク警察はシーア派指導者の顔写真まで掲げる。

   モスルから避難したスンニ派の男性は「IS占領前にシーア派は市民を力で抑えつけ、手当たり次第に逮捕した。復しゅう心だけが残り、一部の人がISに協力した」「ISを追いだしたいなら、政府がまず悔い改める必要がある」と言う。

   アバディ首相は団結を呼びかけるが、宗派対立解消の具体策はない。「モスル奪還に成功しても、利害をどう調整するか、難題が残る」と高岡研究員は指摘する。

   一方、ラッカの状況はどうかを鎌倉キャスターが再び渡辺支局長に問う。「シリアを拠点にするクルド人主体の部隊3万人がラッカの北50キロで戦闘を続けています。モスルと並行して進める作戦です」

   しかし、シリア国内のアサド政権や反政府各勢力の協力はまったくないという。政権と反政府勢力の戦闘が激しい分、対ISの優先順位は下がる。「アサド政権の攻撃から身を守るのが精いっぱいだ」と反政府組織の幹部がNHKの取材に語った。

   鎌倉キャスター「たとえモスルを奪還しても、ISはシリアに逃げ込むのではありませんか」

   高岡研究員「その可能性は十分にあります」

*NHKクローズアップ現代+(2016年11月7日放送「激戦地でいま何が~IS壊滅への攻防~」)

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中