超高層ビル、ネット社会を雷直撃・・・避雷針で防げない被害拡大

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   超高層ビルが増え続ける現代の、新たな雷被害の実態がわかってきた。避雷針では防ぎきれずに屋上の角や側壁を直撃し、コンピュータで制御される電子機器を一瞬で破壊する。夏だけとも限らない。空からの脅威にどう対処したらいいのか。

   風力発電施設を襲う雷の映像が流れる。冬の雷は夏の100倍のエネルギーを発することもあるという。とくに日本海側で多発し「一発雷」とも呼ばれる。

   実は、都市部でも被害が発生している。都心一等地の超高層ビルやホテルを直撃し、屋上の一部や外壁を粉砕する。コンクリートの破片が凶器となって地上を襲う。大学の研究者や専門家10人余でつくる団体が調べると、全国で少なくとも10棟が被害に遭い、うち9棟が100メートル以上の超高層ビルだった。これまでは、わかると財産価値が下がるからと表に出なかった。

都庁、国会議事堂でも被害

   エネルギーを一瞬で放出する雷を防ぐために避雷針があるはずだが......超高層ビルでは完全には防げないのだという。地上20メートルを超す建物には避雷針設置が義務づけられている。しかし、離れた雷が横から襲うことがわかってきた。

   都庁で平成11年、地上180メートルの側壁を直撃し、破片が落下した。この時はけが人は出なかった。国会議事堂でも平成15年、60メートルを超す頭頂部に雷があたり、御影石がワイヤー入りのガラスをつき破り、1階の食堂に落ちた。

   対策普及に取り組む雷害リスク低減コンソーシアムの妹尾堅一郎さんは「避雷針は一種の誘雷針。全部の雷が必ずしも誘導されず、ミスショットとよんでいるが、横に回ってしまうことがある。避雷針だけで防げると考えないほうがいい」と話す。

   建築基準法は平成17年に改められ、ビル側壁や屋上角に金属板をはるなどの雷対策を盛り込んだが、被害に遭った10棟は対策をとらず、中には法改正後に建ったビルもあった。国が新旧いずれかの対策に適合すればいいとしてきたためだ。

   横山茂・静岡大学客員教授は「国の方針が新築でも古い基準でもいいと、対応を曖昧にしてしまった」と指摘する。経過期間としているうちに被害が続いた。業界側も新基準に合わせるには数百万から1000万円以上のコストがかかるため、古い基準ですませることが多かったらしい。

   司会の松村正代アナが「人的被害はどうなのですか」と問いかける。NHK社会部の島川英介記者は「いつおきてもおかしくない」という専門家の見解を伝えた。

   超高層ビルは全国で2500棟あり、今も増え続けている。民間の気象会社は関東や東海で数時間に2000から3000の落雷を観測したこともある。「高層化が危険を顕在化させました」

雷がネットに侵入し電子機器を破壊

   松村「スマホやコンピュータなどで電子化された社会が危険にさらされています」

   80人の透析患者がいる長野県安曇野市の病院で今年(2016年)8月、機器10台が突然ストップした。非常用発電機に切り換えたが、異常を知らせるアラームが鳴り続け、機器は作動しなかった。当時、周辺は激しい雨と雷で停電していた。ちょうど患者を入れ替えるタイミングで被害はなかったが、深刻な事態になりかねなかった。

   病院はメーカーの担当者から雷の異常な電流が原因との説明を受けた。「雷サージ」といい、落雷の周囲に電磁波が発生し、建物に侵入して電子機器に影響する。水上悦子院長は「ぜんぜん考えていなかった。ゾッとしますね」と振り返る。メーカーはNHKの取材に調査中としている。

   緊急時に避難を呼びかける自治体の防災行政無線も、平成24年の1年間に240件以上の被害を受けた。今年8月、前橋市の小学校にあった無線が半年間つかえない状態で放置されていたことがわかった。市は市内85カ所の対策を検討し始めた。

   妹尾さんは「コンピュータがすべてを制御する社会はネットワークでつながっているから、雷が全部に入り込む有雷社会でもある」と語る。コンピュータによるリスク対策そのものがリスクにさらされ、0.02秒あるかないかのうちに機器が止まる「瞬停」に警戒が必要という。

   東京練馬区の総合病院は昨年、200万円をかけてブレーカーに避雷器をとりつけた。京都の清水寺はケーブル150回線に2000万円で避雷器を設置した。ただ「中小では対策が進まない実態があります」と島川記者はいう。

   「雷は天災と考えられていたが、ビルや情報機器が被害を増やしている。防ごうと思えばできるのにやらないのは人災だ」と、妹尾さんは警告する。

   コスト勘定だけを優先して危険な超高層ビルなんて、まっぴらだ。

あっちゃん

   *クローズアップ現代+(2016年12月5日放送「稲妻が超高層ビルを襲う ~明らかになる〝雷クライシス〟」

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