ロナウドを獲得せよ!習近平主席の直接指示?サッカー有力選手「中国爆買い」

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   中国による有力サッカー選手の爆買いが止まらない。ワールドカップなどで活躍した世界のトッププレーヤーを高額年俸でかき集めてサッカー人気を煽り、経済の起爆剤や体制維持につなげようという政府の思惑が働いている。

   元アルゼンチン代表のテベスはこの1月(2017年)、中国のクラブチームに世界最高額といわれる年俸46億円で電撃移籍した。元ブラジル代表のオスカルも30億円で中国チームへ移った。中国はクリスチャーノ・ロナウドにも食指を動かしているといわれる。

イングランドリーグの2倍超の契約金

   テベスを獲得したのは上海の不動産会社が所有するサッカークラブ「上海申花」だ。周軍社長は「交渉は簡単でした」と軽く言う。10日ほどで合意に達した。「決して安くないカネを出したからです。狙いの一つは広告効果で、知名度が上がりました。今後は試合で価値を証明してくれるでしょう」と自信たっぷりだ。

   ロナウドは携帯電話メーカーが去年から広告に起用している。広告契約をきっかけに関係を深めて、いずれチームに呼ぶのが狙いともいわれる。ロナウドのマネジメント会社は「中国との最初のつながりだ。彼は今のレアルマドリードで満足しているが、サッカーは日々状況が変わる、先のことは分かりませんよ」

   キャスターの杉浦友紀アナが中国に移籍したサッカー選手や監督をボードで紹介する。フッコ、ラミレスら有名選手がいて、監督もW杯級が並ぶ。日本で活躍したストイコビッチも、指導者として今は中国にいる。

   サッカージャーナリストの後藤健生さんは「テベスは盛りを過ぎてもうひと稼ぎといったことだろうが、まだ現役バリバリで本当はヨーロッパでやりたい選手も、あれだけのカネを提示されたらいってしまう」と話す。イングランドリーグの専門記者は「どのチームも中国の半分も出せない」という。なかには「カネでつられるのは理解できない」(アーセナルのベンゲル監督)との反発もある。

   後藤さんは「選手を引き抜かれたら、荒らされたという感じを持つのが当然です。一方で、中国に身売りするクラブチームもあり、痛し痒しの両面があります」と指摘する。

W杯「出場」「開催」「優勝」が国家戦略

   背景にあるのは、国家をあげての戦略だ。W杯に出場する、開催する、優勝するが習近平主席の「三つの夢」だそうだ。中国のサッカーリーグは3部52チーム。外国人選手の活躍で人気も上がり、ファンは1億人を超える。これを経済の起爆剤にと国が旗を振り始めた。政府は去年、サッカーを国内消費拡大への重要産業と位置づけ、企業に投資を呼びかけた。

   南京にある家電販売大手の蘇寧グループは売り上げが伸び悩んで、経営戦略の見直しを求められている。そこで、100億円以上を投資して一部リーグのチームを買収し、スター選手獲得に乗り出した。グッズや動画などで収益を得ようとしている。ファンになった27歳の女性は年収100万円の4分の1をグッズの購入にあて、「おカネを使うことで愛を示せる」と言う。企業は中国の巨大な中間層に期待を寄せる。孫為民副会長は「物でなくコト消費が成長のポイント。投資は十分に回収できる」と踏んでいる。

   投資した企業を政府は露骨に優遇する。おととし3部リーグにチームを設立した照明機器の会社は、人民大会堂のLED設備を受注した。会長は「達成感と栄誉を得た。政府の政策にそうことでビジネスチャンスをつかんだ」と、5億円を準備して選手獲得を進める考えだ。

   影響は地方にも拡大する。河北省秦皇島市は衰えた石炭輸出に代わり、政府はサッカーを通じて構造改革を促す。プロチームを誘致しただけでなく、市内の小学校も様変わりした。体育はすべてサッカーで、校庭も芝に張り替えた。共産党幹部が視察する前では、子供たちがサッカー体操なるもので熱心さをアピールする。中国は7万か所にサッカー場を建設し、2020年までにサッカーを軸としたスポーツ産業を50兆円規模にするという。

サッカー熱狂で14億人民の不満ガス抜き

   杉浦アナ「なぜ、こんなに力を入れるのでしょうか」

   神田外語大の興津一郎教授は「サッカーを成長ポイントにすることは、中央政府から省庁、地方へ通達された国策、経済対策なんです。完全なトップダウンで、なんでもかんでもサッカーへ持っていく熱狂が人工的に作られています」と分析する。

   中国サッカー協会はこの1月、1試合に出場できる外国人選手を3人までに制限した。「自分のところの選手が強くなれるかがカギですからね」と後藤さんは言う。「ただ、サッカーは自分で考えるスポーツだから、トップダウンではむずかしいね」

   広東省には250億円をかけて専用グラウンド50面を備えたサッカー学校ができた。中国全土から3000人が入学したが、4分の1は収入が少ない家庭の子だ。「選手になって親孝行したい」と、国から年60万円の補助を受けてボールを追う。

   興津教授「都会の子は受験システムに組み込まれているが、農民工の子にもシステムを作ってあげればチャイナドリームになるんです」

   その夢を、すっかり階層社会になった中国で、不満のガス抜きにしようとする狙いはもう隠しようもない。政府文書には「体育強国」「愛国」「団結」の文字が躍る。サッカーで14億人がまとまるのかどうか。

   後藤「まず強くならないとね」

   そのためならなんでもやりそうな国と国民が札束をかざして走り回る異様な姿が浮かんでくる。

文 あっちゃん

*NHKクローズアップ現代(2017年1月30日放送「14億の熱狂を生み出せ~中国 膨張するサッカー『バブル』~」)

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